研究実績の概要 |
前年度に構築した GPCR と β-Arrestin との相互作用を光制御する技術を発展させ,様々な膜タンパク質についてエンドサイトーシスを光誘起可能な新規光制御システムを構築した. これまでバソプレシンV2受容体 (V2R) のC末端側領域のペプチド断片 (E-fragment) は,単体でArrestinCRYとの光依存的相互作用によりエンドサイトーシスを誘起するほか,様々なGPCRや非GPCR細胞膜タンパク質(Stargazin, TRPV2)についてエンドサイトーシスの誘導を確認した.このうちTRPV2については通常細胞膜に局在するが,E-fragmentを接続した場合に細胞膜局在効率が低下してしまう現象が確認されていた.そこで本年度は,TRPV2の光依存的エンドサイトーシス効率を改善するため,E-fragmentの接続方法について検討した.細胞膜局在効率低下の原因として,E-fragmentがTRPV2テトラマー形成を阻害している可能性,MisfoldのためERにトラップされている可能性などがあったため,GSリンカーの挿入 (GS-E-fragmentCIB)やER exportシグナルの付加(TS-E-fragmentCIB),E-fragmentの疎水性アミノ酸領域の削除 (E-fragmentΔ1-8CIB)を行った.共焦点顕微鏡でこれらの候補分子の細胞内局在を確認したところ,E-fragmentΔ1-8CIBについて細胞膜局在効率の大きな改善が確認された.さらに,発光タンパク質NanoLucの自発的再構成反応を用いて細胞膜表面のTRPV2を定量したところ,E-fragmentΔ1-8CIBでは光依存的なエンドサイトーシス効率が上昇していることが明らかとなった.現在,E-fragment融合型DRD2を恒常発現するトランスジェニックマウスを作成しており,今後成体脳神経細胞での応用を試行する予定である.またキナーゼ型膜タンパク質の光操作技術の開発も並行して行う予定である.
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