研究実績の概要 |
本研究ではUnstructured領域に注目した以下の分解制御方法の開発を行った。 まずUnstructured領域結合抗体による新規分解抑制方法の開発を行った。既に確立している細胞内でも働くことができる小型抗体を用いることにより、その抗体の抗原配列をUnstructured領域にもつモデル蛋白質のプロテアソームによる分解を、in vitro及びin vivoで阻害できることを確かめた。そこで前立腺ガンで分解が亢進するNKX3.1を対象に、そのC末端の分解誘導性Unstructured領域に対する小型抗体を、無細胞ディスプレイ技術を用いて還元的環境で取得した。取得した抗体は確かにC末端分解誘導配列に結合することができた。さらに取得した抗体は、その結合能に応じて、PC3前立腺ガン細胞中のNKX3.1の分解を抑えることを明らかにした。 次に分解誘導性Unstructuredペプチドの標的蛋白質への選択的ケミカルラベリングにより、分解を誘導できるか検証を行った。まずは分解誘導性Unstructured領域をもつユビキチンによるポリユビキチン化が、基質蛋白質の分解を促進することを確認した(Inobe et al. BBRC, 2018)。次に分解誘導性ペプチドを直接標的蛋白質に取り付けるために、Spy-tag/Spy-catcherシステムを用いることにした。このシステムを用いて、細胞夾雑環境でもモデル蛋白質(Spy-catcher)に、Spy-tagを融合した分解誘導性ペプチドを付加できるようになった。さらにこの分解誘導性ペプチドが付加されたSpy-catcherは、プロテアソームにより分解されることを確認している。 以上で開発した蛋白質分解制御方法を利用することにより、将来的には蛋白質分解異常が原因となる病気の治療が可能になると見込まれる。
|