研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
18H04566
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
新井 敏 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (70454056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱力学 / 蛍光プローブ / 蛍光イメージング / 蛍光温度センサー / 光熱変換 / 細胞小器官 |
研究実績の概要 |
細胞内の局所を定量的に、且つ、サブセルレベルで加温する技術の開発が本研究のメインテーマである。この技術の鍵となるのは、光を熱に変換(光熱変換)できる有機色素分子である。特に、生体への将来的な応用可能性を想定して、近赤外領域に吸収を持つ有機色素を中心に研究を展開していく。本年度は、光熱変換色素に関して、1)光照射に伴う発熱量の評価、2)光照射による安定性、3)光照射による活性酸素の発生の有無、以上の3つの指標を元に、スクリーニング実験を行った。結果、色素骨格として、重金属を中心にもつナフタロシアニン系色素、及び、直鎖のシアニン系の色素の幾つかが光熱変換機能を示すことがわかった。一方で、活性酸素の発生が少ない色素は、ごく限られていた。活性酸素は、実験系を複雑化し、温度変化がもたらす細胞への影響のみを議論したい本研究においては、排除すべきパラメータの1つである。 比較的、活性酸素の発生量も少なく、発熱機能も高い色素を元に、細胞の狙った場所に集積できる光熱変換色素を合成した。これと、今まで開発してきた蛍光温度センサーを組み合わせて、細胞内での発熱量も計測した。しかしながら、予備実験時に得られた発熱量を超える分子は今のところ得られていない。一方、光熱変換色素のスクリーニングの過程で、想定していなかったオルガネラに集積する光熱変換色素を見出すことに成功し、現在、そのターゲット能の解析に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の要となる細胞の狙った場所への標的能を持つ光熱変換色素に関して、そのターゲットできる小器官の種類を増やすことには成功している。また、想定していなかった細胞小器官への集積も見られたのは1つの成果である。しかしながら、一方で、発熱量そのものが、予備実験の値を超えられていないのは課題である。
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今後の研究の推進方策 |
近赤外レーザーを照射した際に、活性酸素の発生量が極めて小さい光熱変換色素の骨格をベースに再度、スクリーニングを行い、発熱量が大きい分子を探索する。また、細胞内の色素動態を制御することで、発熱量を最大限取り出せるような仕組みを検討する。年度の途中で、ある程度、区切りをつけ、得られている光熱変換色素をベースに、細胞内での応答を評価していく予定である。また、未だに達成できていないオルガネラに関しても、対象を広げていくことで、細胞応用の可能性を広げていく予定である。
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