宇宙で最初の銀河である初代銀河は、始原ガスから形成される初代星による重元素汚染過程を経て形成される。初代銀河は重力波源の形成、宇宙再電離とも関連が深いため、その形成メカニズムの解明は現在の天文学において急務である。本研究では、新たな計算コードを開発するとともに、大規模な数値シミュレーションを用いて初代銀河形成過程について調べた。まず、銀河形成を明らかにする上で重要となる超新星爆発によるフィードバックについて、解析的なセドフ解をもとにしたモデルを開発し、銀河形成シミュレーションに導入した。これによって、銀河のガスアウトフローと星形成の抑制について精度良く計算する事が可能となった。また、水素のライマンアルファ、CO分子の輝線を含む多波長輻射輸送計算コードを開発した。これによって、すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡などさまざまな波長帯の観測データとシミュレーションの直接比較が可能になり、銀河の物理的性質について多角的に調べる事が可能となった。また、この輻射輸送計算コードと宇宙論的流体計算を組み合わせる事で、初代銀河の形成と輻射特性の関係について調べた。結果として、スターバーストの初期段階では銀河はダストに覆われ赤外線で明るくなる事が分かった。その後超新星爆発によるフィードバックで星形成領域のガスが吹き飛ぶと、銀河は紫外線で明るくなることが分かった。これらの過程を数十万年程度のタイムスケールで繰り返す事で、銀河の輻射特性は大きく変化しながら進化することを示した。これらの結果について、査読付き論文、国際会議、国内研究会の発表を通して示した。また、宇宙大規模構造における初代星形成率、低金属星形成率について高精度な輻射流体シミュレーションによって定量的に調べた。今後、これらの結果を用いて、初代星を起源とする重力波源形成率のモデル化へと応用していく。
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