2019年度は主に、1. 大質量星が重力崩壊を起こす直前の質量放出と重力崩壊時の爆発エジェクタの相互作用の理論計算を行い、特に重力崩壊に伴ってブラックホールが形成される場合に付随する突発天体現象とその検出可能性を議論した。また、2. 連星白色矮星合体の結果形成される強磁場高速回転合体残骸からの磁気遠心力駆動風の理論モデルを確立した。
1.に関してはTsuna et al. 2019において重力崩壊直前の質量放出と重力崩壊じの爆発エジェクタが衝突した結果形成される衝撃波のダイナミクスを自己相似解を用いて記述、衝撃波圧縮を受けたガスからの輻射輸送を解いて、発生するUV/可視光/近赤外のライトカーブを計算する方法を確立した。特に、所謂forward shockとreverse shock両方の寄与を無矛盾に取り入れることに世界で初めて成功した。
2.に関してはKashiyama et al. 2019において、2019年4月に発見が報告された白色矮星J005311 WDが放出する光速の10%もの速度をもつ星風に注目、強磁場高速回転白色矮星からの磁気遠心力駆動風の理論計算を行った。その結果、J005311は質量がおよそ1.2太陽質量、磁場強度がおよそ10^9 G、回転速度がおよそ10秒であることを明らかにした。このようなパラメータは連星白色矮星合体の結果形成される強磁場高速回転白色矮星の合体後数1000年の性質に符合し、J005311がこのような天体の第一例目であることを強く示唆している。
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