研究実績の概要 |
LIGO をはじめとする重力波干渉計により、ブラックホールや中性子星の合体にともなう突発重力波の観測と、可視光、電波、X線など電磁波望遠鏡による追跡観測が世界的な潮流になっている。本研究では、それとは相補的な挑戦的なテーマとして、高速自転する中性子星がその形状を球対称からわずかに歪ませていたときに期待できる定常重力波の検出にむけ、その探査感度の向上に貢献できる、パルサーの自転情報の暦をX線観測によりモニターすることを狙っている。こういった重力波の探査では、孤立中性子星(パルサー)の自転周期を長期にわたって電磁波でモニターすることや、連星をなし相手の星から質量降着を受けた中性子星の降着に応じて変動する周期情報をX線によってモニタ観測することで得られると期待できる。今年度の研究では、2017年に国際宇宙ステーションに搭載された新型の大面積X線望遠鏡 NICER (Neutron star Interior Composition ExploreR) を用いて、X線で観測できるX線パルサー PSR J1412+7922 と PSR J1849-0001 を長期モニタリングし、その自転暦をかつてない精度で求め、将来の LIGO によって星の形状の歪みや r-mode 振動に関する情報に制限を与えられることを示した(Bogdanov, Ho, and Enoto et al., ApJ, accepted arXiv:1902.00144)。これらの NICER の貢献は LIGO チームとの共同研究につながった (LIGO Scientific Collaboration, arXiv:1902.08507)。さらに、こういった NICER の技術を応用した超小型衛星に向けた基礎開発を進めている。本年度は Zynq を用いた読み出しボードを開発したとともに、衛星設計を行った。
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