標準模型ゲージ群にU(1)_{B-L}ゲージ群を付加し、超対称化した模型は、ニュートリノ微小質量を自然に説明するシーソー機構を自動的に含むという点で、魅力的な理論である。U(1)_{B-L}ゲージ群はTeV以上のあるスケールで自発的に破れ、これがU(1)_{B-L}ゲージボゾンの質量を与え、かつ右巻きニュートリノのマヨラナ質量の起源にもなる。そこで、U(1)_{B-L}ゲージ群の自発的破れが一次相転移を伴う場合に、初期宇宙において生成されるstochastic重力波を予言し、それが将来の地上重力波観測実験において観測できるか調査した。特に、U(1)_{B-L}の破れのスケールがTeVスケールより十分高く、U(1)_{B-L}の破れが超対称性を保ったまま起きる場合に注目した。このとき、U(1)_{B-L}を破る場と標準模型ヒッグス場との4点結合は無視でき、この値に依らない具体的な予言ができる。U(1)_{B-L}を破る場の真空期待値を秩序変数とする有限温度有効ポテンシャルを計算し、そこから高温での相転移の頻度を決定するO(3)-symmetric action、さらに、nucleation temperature、相転移により放出される真空エネルギー、相転移の速度を計算し、それらに基づき、重力波スペクトルを、superpotentialのパラメータとU(1)_{B-L}ゲージ結合定数の様々な値について予言した。あるベンチマークについて、予言される重力波スペクトルと、将来の地上重力波観測実験Einstein Telescope、Cosmic Explorerの探索範囲とを比較し、観測が可能であることを明らかにした。また、スペクトルのピークの周波数と振幅から、U(1)_{B-L}ゲージ結合定数とU(1)_{B-L}の破れのスケールとを関連づけることができ、これと将来の100TeV proton-proton collider等でのU(1)_{B-L}ゲージボゾン測定を組み合わせることで、「Minimal SUSY U(1)_{B-L} Model」を検証できることを示した。
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