現在、米国の重力波検出器LIGOをはじめ、イタリアのVirgo、さらには今秋完成した日本のKAGRAによる合同観測が予定されており、今後より精度の高い重力波観測が行われることが期待されている。しかしながら、これら複数台の重力波検出器から得られる観測データの相関解析を行う際に、検出感度に上限を与えてしまう可能性がある重力波以外の信号、すなわち相関ノイズの影響が無視できない可能性があることが報告されている。本研究の目的は、この相関ノイズについて物理的かつ統計的に理解を深め、その知見に基づいて相関ノイズの影響を有意に低減することのできるデータ処理を開発していくことである。 2019年度は、相関ノイズの影響について、解析的に評価できるより洗練した数理モデルを構築してきた。そこで相関ノイズの原因となる地球規模で存在する大域磁場に対する重力波検出器の応答特性に対して線形カップリングを仮定し、さらには年間の世界の雷発生分布に基づいた非等方性大域磁場のモデル化したものを導入することで、これまでの先行研究の測定結果をほぼ再現することのできる解析モデルを導くことに成功した。この研究によって、相関ノイズの強さが、2台の検出器間の地理的関係だけでなく、各検出器の応答ベクトルの相対的関係によって相関ノイズが大幅に低減する可能性があることが明らかになった。この研究成果は2019年度内に論文として仕上げることができた。 また、昨年の秋に日本の重力波検出器KAGRAの完成したことから、現在世界に存在する4台の重力波検出器を用いて、上述した検出器の応答特性を特徴づけるパラメータを、統計処理の観点から推定していくことについて連携研究者とともに議論を行ってきた。
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