公募研究
近年、ブラックホール連星(BBH)からの重力波の直接検出が相次いでいる。BBHからの重力波の観測により、そのBHの質量が分かるため星の初期質量関数や恒星の進化モデル等に制限が与えられると考えられる。そのため、多くの研究者によってBBHの形成過程の研究がなされている。現在、BBH形成の有力なシナリオとして、100万個程度の星からなる球状星団の中で形成されたBHが力学的摩擦により中心に沈み込み他のBHとの近接遭遇によりBBHを形成するというシナリオが提案されている。このシナリオを検証するため、様々な研究者によって星団のN体シミュレーションが行われている。しかし、それらのシミュレーションのほとんどは計算時間の問題から、典型的な球状星団よりも星の数が少ない数万体でのシミュレーションであり、その結果から100万個程度の星からなる典型的な球状星団でのBBHの形成過程を議論することは難しい。また、それらの研究の多くで使われているシミュレーション手法では遠くの星からBBHへの潮汐力を考慮していないため、連星の角運動量進化が正しくないと考えられる。本研究課題ではハミルトニアン分割を用いることで相互作用を遠距離成分と近距離成分に分割し、遠距離成分はtree法で計算する手法(P3T法)を用いることでシミュレーションを高速化するコードの開発を行った。このコードは粒子法用フレームーワーク(FDPS)を用いて並列化を行っているため、合わせてFDPSのP3T法用の最適化も行った。また、遠くの星から連星への潮汐力については遠くの星の作る重力場の局所展開を用いることで計算を行う方法を開発し実装した。このコードにより100万個程度の星からなる典型的な球状星団中でのBBHの形成過程を正確にシミュレーションできると考えられ、球状星団由来のBBHからの重力波のイベントレート等をより正確に計算できると考えられる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 72 ページ: 13-1, 13-22
https://doi.org/10.1093/pasj/psz133
CCF Transactions on High Performance Computing
巻: 72 ページ: 1, 13
https://doi.org/10.1007/s42514-020-00020-1
International Journal of High Performance Computing Applications
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