重力崩壊型超新星爆発などの重力波天体現象は、重力波・ニュートリノなどの放出源や、核物理の検証場所として重要な研究対象である。本研究課題では、それらの天体現象の解明に不可欠な真の核物質状態方程式の構築を目指し、核物質の性質と天体現象のメカニズムの関連を一貫して解明する。具体的には、最先端の核物質理論に基づく状態方程式データを作成・拡張し超新星シミュレーションに適用することで、核物質理論の違いが超新星爆発に与える影響を明らかにする。また補助的な課題として、超新星爆発に影響を及ぼす原子核の種類や性質を明らかにする。 本年度は、順調に研究が進み、学術論文3報(主著1報、共著2報)を発表した。初めに多核種の状態方程式における様々な原子核物理の不定性による超新星爆発の重力崩壊ダイナミクスに与える影響について、網羅的・系統的調査を行った。結果として、中性子数が40から90程度の中質量中性子過剰核の性質が重要であること、特に亜鉛80近傍の原子核の励起状態計算の不定性が重力崩壊に与える影響が重大であることなどを明らかにした。またそれらの状態方程式を用い、原子核の弱相互作用反応率の計算方法が超新星爆発シミュレーションに与える影響を系統的に調べた。原子核の存在比の計算、弱相互作用反応率の計算、どちらもニュートリノ放出や衝撃波の時間発展に大きく影響することを示した。加えて、高速回転する大質量星が起こす超新星爆発の大規模数値シミュレーションを行い、星の自転がニュートリノ輸送に与える影響などを議論した。
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