公募研究
根寄生植物はAM菌などの有用な寄生菌の恩恵にあずかるために宿主植物の根が分泌するストリゴラクトン(SL)を悪用し、宿主の存在のしるしとして認識し、生存戦略に用いていると考えられている。このようにSLには宿主植物側から見ると政府両方の化学シグナルとしての働きを持つ 。一方、SLは植物の枝分かれを制御する重要な植物ホルモンである。本研究では、SLの化学的制御を精密に行う目的で、その受容の分子的メカニズムの解明と制御剤の開発を行っており、SLの新規制御化合物を多数得ている。その中には宿主植物・寄生植物のほとんどの受容体を標的とする化合物も、特定の受容体を標的とする化合物も存在していた。 本研究ではこれまでの受容体研究のノウハウを生かし、合成してきた化合物の作用の汎用性・特異性、構造活性相関を詳細に調べ、SL受容機構の全容解明を目指すと同時に、新たなSL機能制御剤を開発し、農業利用のシーズ化合物の創製を目指している。これまでに主に以下の4つの成果を得ている。1)受容体立体構造の情報を参考にしつつ、根寄生植物ストライガのSL受容体の阻害剤を見出した。2)イネの枝分かれ活性やストライガ種子発芽といった生理活性や酵母ツーハイブリッド法、酵素活性阻 害等のin vitro解析を通じて化合物の汎用性と特異性を評価した。また、シロイヌナズナの種子発芽促進物質カリキンの受容体阻害剤の単離にも成功した。3) SL受容体阻害剤のうち、イネの葉鞘を開かせるという草型の変化させる化合物を見出した。この化合物に類似する化合物には、同様に草型を変化させるものとさせないものが存在した。4)ストライガとイネ(陸稲)の苗を共存させる系を立ち上げることができた。以上、当初の目的達成のための基礎的な知見を得ており、得られた化合物についてはさらに構造展開を行うことでより効果的な制御剤の創製に結び付けられると考えている。
2: おおむね順調に進展している
1)SL機能調節剤の構造展開:受容体立体構造の情報を参考にしつつ、根寄生植物ストライガのSL受容体の阻害剤を見出した。2)化合物の汎用性と特異性:イネの枝分かれ活性やストライガ種子発芽といった生理活性や酵母ツーハイブリッド法、酵素活性阻害等のin vitro解析を通じて化合物の汎用性と特異性を評価した。また、シロイヌナズナの種子発芽促進物質カリキンの受容体阻害剤の単離にも成功した。3)構造活性相関に基づく受容機構解明: SL受容体阻害剤のうち、イネの葉鞘を開かせるという草型の変化させる化合物を見出した。この化合物に類似する化合物には、同様に草型を変化させるものとさせないものが存在した。4)ストライガおよびAM菌との共存試験:ストライガとイネ(陸稲)の苗を共存させる系を立ち上げることができた。このようにいくつかの有望な新規のシード化合物の創製に成功しており、計画は順調に進展していると言える。
1)SL機能調節剤の構造展開:これまでに見出した根寄生植物ストライガのSL受容体の阻害剤と受容体との相互作用を結晶構造解析により詳細に調べるとともに、その知見をもとにさらに改変を行い、より強力なストライガSL受容体阻害剤を創製する。2)化合物の汎用性と特異性:イネの枝分かれ活性やストライガ種子発芽といった生理活性や酵母ツーハイブリッド法、酵素活性阻害等のin vitro解析を通じた化合物の汎用性と特異性の評価をさらに進める。また、単離したシロイヌナズナの種子発芽促進物質カリキンの受容体阻害剤の受容体特異性についても解析を進める。3)構造活性相関に基づく受容機構解明:これまでに見出したイネの葉鞘を開かせるという草型を変化させる化合物の作用の構造活性相関解析を通じて、SL受容体の新たな機能の解明を目指す。さらに、カリキン受容体阻害剤の構造活性相関や受容体との相互作用の解析を通じて、より強い阻害剤の創製や、カリキン受容体の受容機構の解明を目指す。 4)ストライガおよびAM菌との共存試験:立ち上げに成功したストライガとイネ(陸稲)の苗を共存させる系を用いて各種化合物のストライガ寄生への効果を調べる。また、AM菌とイネの共生系への効果も調べる。
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Molecular Plant
巻: 12 ページ: 44~58
10.1016/j.molp.2018.10.006
Nature Communications
巻: 9 ページ: -
doi: 10.1038/s41467-018-06452-2