公募研究
本研究において、活性イオウ分子産生酵素の選択的阻害剤の探索、構造最適化を通して、活性イオウ分子の機能解明に有用な新たな阻害剤の開発を行うことを目的としている。特に、これまでに開発に成功している、活性イオウ分子を選択的に検出する蛍光プローブ群を用いることで、多数の化合物ライブラリーから阻害剤候補となるリード化合物を効率的かつ独自のアプローチによってスクリーニングを行う。平成30年度は、化合物ライブラリーとしては、これら活性イオウ分子産生酵素がPLP依存性酵素であることから、この活性中心のPLPのアルデヒド基と安定なシッフ塩基を形成するヒドラジン構造及びアミノオキシ構造を持つ化合物群およそ1000化合物を用いて、酵素活性の評価方法として、酵素反応によって産生されるH2Sをこれまで研究代表者らが開発したH2S検出蛍光プローブを用いることで阻害剤スクリーニングを行い、阻害剤候補化合物の探索を行った。その結果、標的酵素であるCSE及びCBSに対して、それぞれ選択的かつμMからsubμMのIC50を示す阻害剤を見出すことに成功した。今後、これら阻害剤の構造最適化および生細胞への応用を行っていく。さらに、これまでに研究代表者らによって開発されているH2Sやsulfane sulfurを検出する蛍光プローブを広く研究者らに供与・共同研究することによって、国際共同研究を通して、N-アセチルシステインの抗酸化作用や細胞保護作用のメカニズムを明らかにすることに成功した(Cell Chem. Biol. , 25, 447-459.e4 (2018))。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究において、これまでに開発に成功している、活性イオウ分子を選択的に検出する蛍光プローブを用いることで、多数の化合物ライブラリーから阻害剤候補となるリード化合物を効率的にスクリーニングする。化合物ライブラリーとしては、これら活性イオウ分子産生酵素がPLP依存性酵素であるため、この活性中心のPLPのアルデヒド基と安定なシッフ塩基を形成するヒドラジン構造及びアミノオキシ構造を持つ化合物群を用いて、阻害剤候補化合物の探索を行った。本年度は、CSE及びCBSの2つの活性イオウ分子産生酵素について、ヒドラジン構造及びアミノオキシ構造を持つ化合物群を用いて阻害剤スクリーニングを行ったところ、それぞれ選択性が高く、かつ活性も高い阻害剤を得ることに成功したため、計画以上に進展しているとした。
本年度は、これまでに見出した2つの阻害剤について、SPR測定や共結晶解析、蛍光スペクトル測定などによって結合形式を明らかにすると共に、開発した阻害剤の生細胞への応用を通して生命科学研究におけるそれら阻害剤の有用性を明らかにしていく。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件) 図書 (3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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