前年度に味覚受容体T1r細胞外領域を用いた味物質結合解析系としての有効性を確認した示差走査蛍光測定法について、異なるバッファー条件など幅広い測定条件下での有効性を確認した。さらに、構造解析未達成のT1r1-T1r3の試料調製や結晶化への利用を目指し、同法を用いたT1r1-T1r3のリガンド探索を実施した。T1r1-T1r3細胞外領域については、発現・精製条件の最適化を行い、最終精製収量を改善した。この精製試料を用いて、前年度得られた結晶化条件の最適化を試みた。残念ながら微小結晶からの結晶サイズの改善を行うことができなかったが、SPring-8のマイクロフォーカスビームラインやZOOシステムなどの微小結晶構造解析手法を利用して、X線回折能確認と回折強度データの部分的な収集を行った。 さらに、すでに構造解析を達成しているメダカT1r2a-T1r3細胞外領域の結晶構造中に確認されたナトリウムイオン結合について、その他のイオンを結合した状態でのX線結晶構造解析を行うことで、イオン結合特異性の解析を行った。その結果、ナトリウムイオンの結合がみられた部位は、カリウムイオンも含め1価カチオンへの特異的な結合能を持つことを明らかにした。同部位の立体構造上の特徴と、T1r間のアミノ酸配列比較から、同部位は、メダカT1r2a-T1r3だけでなく、T1r1-T1r3も含めた他のT1rにも共通的に存在するカチオン結合部位であることを見出した。
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