研究領域 | 化学コミュニケーションのフロンティア |
研究課題/領域番号 |
18H04627
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
臼杵 克之助 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30244651)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 繊毛虫 / 接合誘導物質 / 自己防御物質 / LCMS分析 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
Blepharism 属ガモン2の化学的同定手法:繊毛虫Blepharisma japonicumが産生する接合誘導物質ブレファリズモン(ガモン2)について、蛍光検出によるHPLC とイオンペア試薬を用いた質量分析MS とを組み合わせたLC/MS による同定手法を確立した。さらに、化学合成したブレファリズモンとの混注などの実験から、他種の繊毛虫由来の細胞外液CFF2中にもブレファリズモンが含まれていること、すなわち、Blepharism 属の他種が産生するガモン2がブレファリズモンと同一であることを明らかにした。 ブレファリズモンの生合成経路:接合誘導物質ブレファリズモンの生合成における前駆体を化学的に探索すべく、繊毛虫B. japonicum Ⅱ型細胞の培養・CFF2(cell-free-fluid, 細胞外液)について LC/MS による解析を行った。化学合成した標品との比較により、いくつかの想定される生合成中間体がCFF2中に存在していることを明らかにした。また、取込み実験に向けて、含フッ素擬似体の合成を行った。 ガモン2受容体探索に向けたプローブ分子の合成:光反応性基とビオチンタグを導入したプローブ分子を設計し、まず、その部分構造を有する誘導体の合成を達成した。現在、ガモン2との拮抗阻害活性を検証すべく、生物活性評価を行っている。 ブレファリズミンの全合成:ブレファリズミンの大量供給を可能にすべく、合成経路の初期段階について再検討を行った。 自己防御物質の探索・構造解析:海洋性繊毛虫B. hyalinum の自己防御物質を単離・構造解析を行うのに必要なサンプルをより大量に得るべく、B. hyalinum の培養条件を再検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接合誘導物質ブレファリズモン(ガモン2)について、LC/MS による簡便な同定手法を確立することができ、迅速な分析が可能となった。ブレファリズモンがセロトニンと構造が類似していることから、セロトニン受容体に作用する天然有機化合物について、それらの接合誘導活性評価を領域内での共同研究により開始することができた。また、ブレファリズモンそのものについて、抗がん活性や抗菌活性などの活性評価を領域内での共同研究で行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 引き続き、ガモン2受容体探索に向けたプローブ分子の合成に取り組む。また、蛍光標識を導入したプローブ分子の設計・合成を領域内での共同研究で行う。Ⅰ型細胞と培養することで、ブレファリズモンの標的タンパク質を標識化して同定する。領域内での共同研究により開始したセロトニン受容体に作用する天然有機化合物の接合誘導活性評価を進めて、ガモン2受容体とセロトニン受容体との関連を考察する。 2. ブレファリズミンの全合成については、合成初期段階のルート見直しにとどまっているので、大量供給を可能にすることを第一の目標として研究を進める。 3. 海洋性繊毛虫B. hyalinumの自己防御物質について。活性成分が安定的に得られるように培養条件・単離精製条件を精査する。
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