Blepharisma属において共通の接合誘導物質(ガモン2)であるブレファリズモンの受容体探索:ガモン2受容体はセロトニン受容体の一種ではないかという作業仮説を立てた。そこで、セロトニン受容体に作用する天然物について接合誘導/接合阻害活性を評価した。これまでのところ、作業仮説を支持する結果は得られていない。ベンゾフェノンの光増感作用によりブレファリズモンそのものの自家蛍光を増幅し、光親和性標識としての機能も附与すべく、ベンゾフェノン部位を連結したツール分子の合成を達成した。この分子は接合誘導活性を示さないが、ブレファリズモンの接合誘導への競合的阻害活性を示すことから、ガモン2受容体に作用していることを明らかにした。さらに、種々検討することにより、B. undulansのⅠ型細胞を蛍光顕微鏡で観察するための条件を確立することができた。さらに、アビジンとの強力なアフィニティーによる分離精製を行うべく、ヒュスゲン環化付加を鍵段階として、このツール分子へビオチンタグを導入した。また、緑色蛍光発色団BODIPY-FLをブレファリズモンに連結したツール分子の合成も達成した。現在、ガモン2の接合誘導活性への阻害作用を評価している。 自己防御物質の探索・構造解析:B. japonicumよりも小型で、無色の表層顆粒を持つ海洋性繊毛虫B. hyalinumの表層顆粒に含まれる毒性成分の構造解析を行った。1次元NMR測定から、繊毛虫Climacostomum virens由来の自己防御物質クリマコストールとの構造の類似性、すなわち活性本体は5-置換レゾルシノール誘導体であることが示唆された。しかし、2次元NMR測定を行うのに十分な量のサンプルが天然から得られなかったため、合成化学的に構造解析を行うべく、想定されるいくつかの構造を化学合成し、スペクトルデータの比較による構造決定を検討した。
|