土壌バクテリアCollimonas fungivorans Ter331 株は、栄養欠乏状態でカビ菌糸を溶かし資化する。そのため、“fungus-feeding bacterium”(食カビ性バクテリア)とも呼ばれている。本菌が産生する主要な抗真菌物質としてcollimonin 類の存在は示唆されていたものの、末端アルキンから始まる連続したポリイン構造のため、安定的に単離し構造決定することは極めて困難であると言われていた。その実現には、LC/NMR などの特異かつ超高額な分析機器が必要とまで考えられていた。我々は、長い時間をかけた予備検討の結果、安定的にcollimonin 類を単離し、NMR などの機器分析に供することを可能にする全く新しいワークフローを確立し、各種NMR を使ってcollimonin A-D の4 種の平面構造を決定した。平面構造を決定した結果、collimonin 類には複数の不斉炭素が存在することが分かった。そこで、安定的に水素添加反応を実行する条件、クリック反応によりポリイン部分を安定化する条件、ジオール構造の立体配置を決定するワークフロー、結晶スポンジ法を取り入れた絶対立体配置決定のワークフローを確立し、それらが細菌ポリイン類の絶対立体配置決定に強力であることを見出した。なお、細菌ポリイン類の完全な絶対立体配置を解明したのは世界初である。さらに、collimonin Bが特異的に真菌類の二次代謝産物誘導を引き起こすことを発見し、その真菌二次代謝産物の単離・構造決定に向けて検討を進めた。遺伝子発現変動の解析を進め、細菌-真菌間の新しい化学コミュニケーションが存在する可能性を示唆した。
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