公募研究
害虫の唾液内に含まれるエリシターは植物の防御応答を誘導する分子であるが、奇主植物におけるエリシター受容体の同定には至ってはいない。本研究では、ハスモンヨトウ幼虫唾液内オリゴ糖成分のエリシター受容体をダイズ(GmHERK)ならびにシロイヌナズナ(AtHERK)において同定し、HERKを介した寄主植物における防御応答メカニズムの解明を試みた。害虫由来エリシターを認識する受容体タンパク質を同定するために、ダイズreceptor-like kinase (RLK)ファミリーから受容体候補遺伝子を選抜し、これらを恒常的に発現する組換えシロイヌナズナを作出した。15候補遺伝子の過剰発現シロイヌナズナ系統に、ハスモンヨトウ幼虫吐き戻し液(OS)を処理したところ、2系統における防御遺伝子PDF1.2の発現量が野生株よりも顕著に誘導された。また、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製された、糖化合物を含むエリシター画分(Frα)を上記2系統に処理した場合においても、PDF1.2の発現は野生株と比べて亢進されたことから、HERKは糖エリシターに特異的に応答する受容体である可能性が示唆された。さらに、ウイルスベクターを用いてGmHERKの発現を抑制したノックダウンダイズ系統を作出しFrα処理を行ったところ、防御遺伝子の発現量が野生株に比べて有意に低下した。また、ダイズHERK相同性遺伝子であるAtHERK候補遺伝子の欠損変異株(5系統 : R1~5)にOSを処理したところ、野生株と比べてR2系統(herk1)では、PDF1.2の発現量が有意に低下した。また、AtHERK1は細胞膜上でホモ2量体を形成し、下流因子であるPBL27に情報伝達する可能性も示唆された。これらの結果から、ダイズとシロイヌナズナの両HERKは害虫由来エリシター受容体システムにおける鍵因子として機能することが結論された。
2: おおむね順調に進展している
実験は計画通りに進んでいる。
エリシター分子とHERKの分子間相互作用の確認、エリシター認識時に受容体複合体を形成する相互作用タンパク質の同定、下流シグナル伝達系ネットワークの解明を試みる。エリシターの更なる精製も進める。具体的には、以下の3研究項目を実施する。項目1 エリシターの精製および同定項目2 AtHERKの同定および分子機能の解明項目3 AtHERK相互作用タンパク質の同定
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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