研究領域 | 化学コミュニケーションのフロンティア |
研究課題/領域番号 |
18H04631
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
諸橋 賢吾 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (60748937)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | システム生物学 / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
生物は自らを維持し環境に適応するため、低分子化合物を介した生体内外での情報コミュニケーションを行う。この情報コミュニケーションメカニズムの解明の重要性にもかかわらず、生体内に膨大に存在する化合物の種類や量を鑑みると、その研究は未だ不十分と言わざるを得ない。その理由の1つとして、化合物を中心とした生体内情報コミュニケーション解析の技術的困難さがある。申請者らはペプチドに強固に結合するRNAアプタマーを利用した新規超高感度タンパク質相互作用検出法の開発に成功している(未発表)。また、低分子化合物と相互作用するペプチドの新たな検出手段としてファージディスプレイ法と次世代シーケンス技術を組み合わせた手法を開発している。本研究では、RNAアプタマー利用した超高感度タンパク質-化合物アフィニティ検出技術を核とした、低分子化合物結合ペプチドを新たに見出し、それらを利用することで化合物を用いた生物機能制御ツールを開発することを目的としている。利用する低分子化合物としてはフラボノイドを主たる化合物として選択した。その理由は、フラボノイドはポリフェノールの一種として生体内に様々な修飾を受け豊富に存在している。毒性が低いにもかかわらず、これまでに多くの生理活性が報告されている。特に糖が付加した配糖体フラボノイドには生理活性が強い性質があるが、その分子機構は不明である。そのため、本研究はフラボノイドの生体機能解明への手がかりにもつながる可能性がある。本年度は、フラボノイドの一種であるケンフェロールと3位配糖体であるアストラガリンに結合するペプチドの探索を行った。次世代シーケンス技術を組み合わせたPD-Seq法を用いて、9アミノ酸からなるランダムペプチドライブラリースクリーニングを3回行い、統計的に有意なペプチド配列の取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、RNAアプタマー利用した超高感度タンパク質-化合物アフィニティ検出技術を核とした、低分子化合物結合ペプチドを新たに見出し、それらを利用することで化合物を用いた生物機能制御ツールを開発することを目的としている。本年度は、フラボノイドの一種であるフラボノールと結合するペプチドの探索を行った。次世代シーケンス技術を組み合わせたPD-Seq法を用いて、9アミノ酸からなるランダムペプチドライブラリースクリーニングを3回行い、統計的に有意なペプチド配列の取得に成功した。具体的には、最低でも約800万種におよぶランダムアミノ酸配列ペプチドファージライブラリーと担体に固定したケンフェロールもしくはアストラガリンを混合し、洗浄によって結合の弱いファージを除去した後に、結合ファージを回収した。回収したファージからランダムアミノ酸領域をPCRによって増幅し、次世代シーケンサー用ライブラリーを作成した。担体のみから回収したファージおよびフラボノイド担体から回収したファージ、それぞれ約1000万におよびペプチド配列の取得に成功した。アグリコンであるケンフェロールと配糖体のアストラガリンから回収されたアミノ酸配列に対して、統計的に有意な配列を比較したところ、興味深いことにケンフェロールから回収されたアミノ酸配列が35にすぎなかったのい対して、アストラガリンから回収されたアミノ酸配列は約2000に及んでいた。この結果は、配糖体に結合するアミノ酸の種類が多いことを示しており、配糖体フラボノイドの生理活性が高いこととの関連を示唆している。このように、本年度はフラボノイド結合アミノ酸情報の取得に成功したが、RNAアプタマーを用いたスクリーニングはまだ進行中のため、おおむね順調に進んでいるとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は取得したアミノ酸配列とフラボノイドとの相互作用確認実験を行う。その際には、RNAアプタマー技術を利用する。それと並行してRNAアプタマー技術を哺乳動物細胞に拡張させ、フラボノイドとの結合を動物細胞において調査する。また、転写因子との低分子化合物との結合スクリーニングを開始する。
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