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2018 年度 実績報告書

結核菌細胞壁脂質の化学生物学研究

公募研究

研究領域化学コミュニケーションのフロンティア
研究課題/領域番号 18H04632
研究機関早稲田大学

研究代表者

細川 誠二郎  早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (10307712)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード結核菌 / 脂質 / 全合成 / 細胞膜 / 生物活性物質
研究実績の概要

結核菌細胞壁脂質のマクロファージに対するネクローシス誘導のメカニズム解明に向けて、原因物質とみなされるフチオセロールジマイコセレート(PDIM)およびその構成成分であるマイコセロシン酸とフチオセロールのスケールアップ合成を行っている。現在までに、マイコセロシン酸とフチオセロールは数百ミリグラムずつ合成した。また、もう一つの結核菌毒性細胞壁脂質とみなされているPGL-tb1の全合成を達成した(論文準備中)。本合成では、PDIMの合成経路に則り、マイコセロシン酸の合成およびフチオセロールの中間体からの末端アセチレン誘導体を合成し、三糖が付いたヨードベンゼンと薗頭カップリングで接続することにより、三糖が付いたフチオセロール誘導体を合成した。このフチオセロール誘導体とマイコセロシン酸の縮合によってPGL-tb1の全合成を完了した。
さらに、 PDIMの合成研究で見出した、立体選択的プロトン化を実現する嵩高いプロトン化剤である2-アルキルベンズイミダゾールを用いて、天然物合成によく使われるγ-ラクトンとδ-ラクトンの短工程合成に成功した(Tetrahedron Letters, 60, 411, (2019))。本研究では、嵩の低いアルキル鎖を有するα,β-不飽和イミドのBirch還元におけるプロトン化では2-イソプロピルベンズイミダゾールが有効であり、α,β-不飽和イミドのβ,γ-不飽和イミドへの異性化反応におけるプロトン化では2-メチルベンズイミダゾールが高立体選択的に生成物を与えることを見出した。加えて、この立体選択的プロトン化を利用して抗がん物質PM1163Bの全合成を達成した(Syntlett, 30, 709, (2019))。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

既に報告しているPDIM Aの全合成経路(Organic Letters, 18, 132 (2016)、Chemistry Letters, 45, 550 (2016))に則り、マイコセロシン酸とフチオセロールは数百ミリグラムずつ合成した。また、PGL-tb1の全合成も達成し、現在は論文作成のための各合成中間体のスペクトルデータの採取を進めている。これについても、数百ミリグラムからグラムスケールのスケールアップ合成を行っているが、再現性はとれており、特に困難な箇所は無い。現在、フチオセロールの蛍光標識体の合成にもとりかかっている。また、これらの化合物の合成研究途上見出した、嵩高いプロトン化剤としての2-メチルベンズイミダゾールによる立体選択的なプロトン化反応が、他の化合物の合成にも応用できることもわかっており、他の生物活性物質の合成研究への展開を進めている。

今後の研究の推進方策

予備実験として、PDIMおよびその構成成分であるマイコセロシン酸とフチオセロールのマクロファージのネクローシス誘導活性を検討し、フチオセロールが活性を示すことがわかっている。本研究でフチオセロールとマイコセロシン酸を数百ミリグラムずつ合成しているので、この実験の再現性を検証し、結核菌細胞壁脂質の活性を再検証する。
また、フチオセロールのアルキル鎖部分の末端に蛍光色素を取り付けた蛍光標識体を合成し、活性を評価する。活性が確認され次第、蛍光によってそのマクロファージ内の分布を確認する。また、PDIMがネクローシス誘導活性を示すことが報告されていることから、蛍光ビーズにマイコセロシン酸を結び付けた後、フチオセロールの蛍光標識体を縮合してダブルラベル化PDIMを作成し、マクロファージ内でのPDIMの加水分解を可視化する。さらに、フチオセロール蛍光標識体の発光基を光反応基に組み替えた化合物を合成し、マクロファージ内で光反応により標的タンパク質との共有結合を形成させ、標的タンパク質を同定する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Total Synthesis of PF1163B2019

    • 著者名/発表者名
      Hosokawa Seijiro、Sengupta Aakash
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: 30 ページ: 709-712

    • DOI

      10.1055/s-0037-1610694

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis of the C1?C17 Segment of Bafilomycin N2019

    • 著者名/発表者名
      Hosokawa Seijiro、Sato Haruka
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: 30 ページ: 577~580

    • DOI

      10.1055/s-0037-1611727

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 2-Isopropylbenzimidazole and 2-methylbenzimidazole as bulky proton sources: Stereoselective protonation and application to the synthesis of γ- and δ-lactones2019

    • 著者名/発表者名
      Sengupta Aakash、Hosokawa Seijiro
    • 雑誌名

      Tetrahedron Letters

      巻: 60 ページ: 411~414

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.tetlet.2018.12.044

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis of C3?C21 Segment of Aflastatin A Using Remote Asymmetric Induction Reactions2019

    • 著者名/発表者名
      Murakoshi Sawato、Hosokawa Seijiro
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 21 ページ: 758~761

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.8b04008

    • 査読あり
  • [学会発表] Synthetic Studies on PGL-tb12019

    • 著者名/発表者名
      Yudai Tanaka, Shoichiro Sano, Tatsuya Nakamura, Takanori Ieki, Hanae Nakagome, Kei Kubota, Tomoko Sadayuki, Seijiro Hosokawa
    • 学会等名
      The 1st International Symposium on Chemical Communication(ISCC2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] スルホニルアジリジンとα,β-不飽和カルボニル化合物の[3+2]環化付加反応2019

    • 著者名/発表者名
      中川侑哉・山口圭吾・細川誠二郎
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] Karrikinolide の短工程合成2019

    • 著者名/発表者名
      桐田奏・細川誠二郎
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] イグジグリンの合成研究2019

    • 著者名/発表者名
      中西啓介・前田充俊・佐藤誠也・宇田川裕多郎・細川誠二郎・市川善康
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] α,β-不飽和イミドへの立体選択的なホウ素の付加反応2019

    • 著者名/発表者名
      古家駿・細川誠二郎
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] 煙に含まれる発芽促進物質Karrikinolide の3 工程合成2019

    • 著者名/発表者名
      桐田奏・細川誠二郎
    • 学会等名
      日本農芸化学会年会2019年度大会
  • [学会発表] 結核菌細胞壁脂質の化学生物学研究2018

    • 著者名/発表者名
      田中雄大、細川誠二郎
    • 学会等名
      新学術領域研究「化学コミュニケーションのフロンティア」第3回公開シンポジウム
  • [学会発表] 結核菌細胞脂質のマクロファージ細胞死誘導2018

    • 著者名/発表者名
      田中雄大、祝弘樹、中村竜也、佐野翔一朗、家喜高徳、中込英恵、久保田慧、定行智子、切替照雄、細川 誠二郎
    • 学会等名
      第19回Pharmaco-Hematologyシンポジウム「私たちに迫るパラダイムシフト」
  • [学会発表] 結核菌細胞壁脂質PDIM Aのグラムスケール合成2018

    • 著者名/発表者名
      田中 雄大、細川 誠二郎
    • 学会等名
      第8回CSJ化学フェスタ2018
  • [学会発表] Total Synthesis of PF1163B2018

    • 著者名/発表者名
      Aakash Sengupta、Seijiro Hosokawa
    • 学会等名
      第8回CSJ化学フェスタ2018
  • [学会発表] Alcynolideの合成研究2018

    • 著者名/発表者名
      髙橋 新、文山 仁、細川 誠二郎
    • 学会等名
      第8回CSJ化学フェスタ2018
  • [備考] http://www.waseda.jp/sem-hosokawalab/

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公開日: 2019-12-27  

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