研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04638
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐田 和己 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80225911)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 温度応答性高分子 / ハイブリッド触媒 / 有機触媒 / 下部臨界共溶温度 / 高分子溶液 / 相転移 / エステル化反応 / DMAP |
研究実績の概要 |
ピレン官能基の電荷移動錯体を利用する温度応答性高分子および尿素官能基の水素結合を利用する温度応答性高分子に有機触媒または遷移金属触媒を導入し、エフェクター存在下、温度や化学物質の応答するオンデマンドハイブリッド触媒を合成することを目的とする。有機触媒であるN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)基を有するモノマーとピレン官能基もつモノマーを共重合して、1~5 mol%の触媒サイトを持つ温度応答性高分子を合成した。この高分子は1,2-ジクロロエタンなどの低極性有機溶媒に対する溶解性が低く、エフェクター存在下では高温側で凝集し、低温側で溶解する下部臨界共溶温度(LCST)型の温度応答性が発現することが明らかになった。さらに、反応基質存在下でも同様なLCST型の温度応答性を示した。そこで、酸無水物と第2級アルコールのエステル化反応について、エフェクターの有無による触媒活性制御およびLCST型の温度応答の曇点付近での触媒活性の温度依存性を測定した。エフェクターの無の条件では反応がほとんど進行せず、エフェクターにより高分子ハイブリッド触媒の溶解性が変化し、触媒活性が向上することが明らかになった。また曇点以下の20℃での触媒活性は曇点以上の60℃の条件より高く、高温側で触媒活性の低下が見られた。実際の反応系をみると、白濁しており、高分子ハイブリッド触媒の相分離が触媒の低下を誘起したと考えられる。したがって、温度オンデマンドもしくはエフェクターオンデマンド触媒系の構築ができたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り、温度オンデマンドもしくはエフェクターオンデマンド触媒系の構築に成功しており、およその目標は達成できている。しかしながら、LCST型の温度応答性高分子を利用し、高温側での相分離が確認できたにも関わらず、当初の予定よりも触媒活性の低下が少なく、ミセル構造など高分子中の触媒性官能基の遮蔽度をあげる必要性があり、分子設計の再考も視野に入れている。
|
今後の研究の推進方策 |
尿素官能基の水素結合を利用する温度応答性高分子について、同様に有機触媒または遷移金属触媒を導入し、水素結合性の化合物をエフェクターとしたオンデマンド高分子ハイブリッド触媒を合成する。さらに各々尿素ポリマー及びピレンポリマーをベースにオンデマンド高分子ハイブリッド触媒を用い、二種類のエフェクターによって、二種類の反応の触媒活性の同時制御を行なう。さらに、片側のエフェクター自身が関与する化学反応を触媒する触媒をもう一方のエフェクターオンデマンド高分子ハイブリッド触媒に組み込むことで、自己触媒性のシステムの構築を明らかにする。また、新しい温度応答性高分子についても検討を行う。また、多様な有機反応について、オンデマンド高分子ハイブリッド触媒化を考える上では、触媒部位をより簡便な手法で導入することについても検討を行う。
|