研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04639
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 敏文 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80291235)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハイブリッド触媒 / リビング重合 / 配列規制重合 / 機能性高分子 |
研究実績の概要 |
本研究はハイブリッド触媒を用いた配列規制重合の開発とこの重合法を利用した高付加価値な機能性高分子材料の開発を目的としている。本年度は下記の2つについて重点的に検討を行った。 ①新規ハイブリッド触媒の探索:新たなハイブリッド触媒系として酸・塩基複合型触媒に着目し、触媒候補の探索を行った。その結果、安息香酸アルカリ金属塩がラクチドや環状カーボネートの開環において有用であることを見出した。安息香酸部位のベンゼン環上置換基を変えた一連の触媒を用いて重合を行い、触媒回転頻度を調べた。その結果、安息香酸アルカリ金属塩の塩基性が高くなるほど触媒回転頻度が高くなる傾向が確認された。このことから、本重合はアニオン重合性の機構で進行していることが示唆された。また、分子内で酸・塩基複合しているベタインに着目し、その重合触媒としての可能性を検討した。その結果、トリメチルグリシンが環状カーボネートの開環重合に有用であることを見出した。トリメチルグリシンはモノマーのカルボニル基と生長末端水酸基の両方を活性化することがIR測定により判明し、重合は二重活性化機構で進行していることが示唆された。 ②ハイブリッド触媒を用いた配列規制重合:グリコール酸と乳酸の共重合体であるPLGAは生体適合性と生体内分解性を兼ね備えており、医療用材料として極めて重要である。PLGA中のグリコール酸と乳酸ユニットは多くの場合ランダムに配列しているが、本研究ではハイブリッド触媒を用いることでメチルグリコリドの開裂位置選択的開環重合を実現し、配列制御によるPLGAの物性制御を目指した。幾つかの触媒を検討したところ、ホスファゼン塩基/アルコール触媒系を用いることで交互性の高い配列を有するPLGAが得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新たなハイブリッド触媒として安息香酸塩やベタインなどを見出している。さらに、ハイブリッド触媒を用いることで狙い通りの配列規制重合を既に達成しつつあり、配列がポリマー物性に与える影響についても検討を開始している。特に、医療用分野で極めて重要な材料であるPLGAについて配列制御を達成できたことは大変意義深い。これらのことから、当初の想定を上回る成果が得られていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各種の重合に有用な新規ハイブリッド触媒の探索を行う。また、配列制御したPLGA合成についてさらに詳細な検討を進め、配列に起因する特異な物性を明らかにする。メチルグリコリド以外にも様々な非対称環状エステルモノマーに本重合系を適用し、モノマー配列を基盤とした機能性脂肪族ポリエステルの創製につなげる。
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