研究実績の概要 |
アルケンは、天然物や有機工業製品に広く含まれる重要な官能基であり、そのE/Z幾何異性を制御することは長年の有機合成化学における課題となっている。アルケンの幾何異性体は、通常、E体が熱力学的に安定であり、ひとたびE体アルケンが生じた場合、これをZ体に高収率で変換する手法には大きな制約があり、熱反応条件(暗所下)でE→Z異性化を高選択的に実現する手法の開発が強く求められている。本研究では、M-M結合活性種を用いた新しいアルケン異性化機構を提案・実証し、熱反応条件でのアルケンの選択的E→Z異性化反応を開発することを目指して研究をおこなっている。 これまでに、不飽和炭化水素類に対して高い付加反応性を示すパラジウム二核錯体を用いることにより、E-1,3-ジエンに対する二核付加・立体反転・トランスオレフィネーションを経てZ-1,3-ジエンを選択的に得る方法を確立した。2019年度には、ジエン基質の適用範囲拡張を目指して反応開発を進めた結果、パラジウム二核錯体を用いた二核付加・アンチ脱離機構によるE→Zジエン異性化が進行することを見出した。アンチ脱離反応は、安定有機ラジカルであるTEMPOを添加することによって立体選択的に進行することを明らかにした。
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