研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04660
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山中 正浩 立教大学, 理学部, 教授 (60343167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 相互作用ネットワーク / DFT計算 / 遷移状態 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
本研究では、計算研究を主体として国内外の実験研究と密に連携することによって、触媒/基質間に働く複雑な相互作用ネットワークの体系的な理解を深化させ、分子合成オンデマンドの要請に応え得る分子性触媒の先鋭化やハイブリット化を指向した合理的かつ精緻な触媒設計指針を確立することを目的としている。具体的には、(1)GRRM/AFIR法を用いて反応系に潜在する多様な遷移状態や相互作用ネットワークを網羅探索し、(2)得られた遷移状態群をクラスター分析によって分類し反応制御に関わる核心的要素を精査することで、異種相互作用の協働によるハイブリッド型反応制御を解明する。本年度は異種相互作用が潜在する反応系の1つとして、オレフィン部位でハロゲン化と官能基化を立体選択的に同時に達成する不斉ハロ環化反応やインドールアルカロイド類の立体選択的合成法として重要なPictet-Spengler反応を中心に理論的検討を行った。現在までに、上記のワークフローに従った遷移状態の網羅探索からクラスター分析による分類を経て鍵となる重要な遷移状態を特定する方法について、一定程度確立することができた。また、領域内班員との共同研究として、銅カルベン錯体とイミンの反応、位置選択的CHボリル化反応についての初期検討を行い、今後の検討指針を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触媒/基質間に働く複雑な相互作用ネットワークが潜在する反応系として、不斉ハロ環化反応やPictet-Spengler反応を中心に理論的検討を行い、異種相互作用ネットワークによる立体制御機構を解明することに成功した。さらに、理論計算先導型の合理的触媒・反応設計の鍵となる遷移状態の網羅探索から重要な遷移状態を特定する方法について、一定の成果を得ることができた。これらの成果は実験研究へとフィードバックされ、どちらの触媒反応についても新しい触媒・反応系の開発へとつながっており、今後はさらに領域内班員との共同研究にも展開していく予定である。以上より、現在までの進捗状況として、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度(平成30年度)に引き続き、一定程度確立した遷移状態の網羅探索から鍵となる遷移状態を特定する方法論をより先鋭化して完全に確立していく。さらに、領域内班員との共同研究として初期検討を開始した銅カルベン錯体とイミンの反応や位置選択的CHボリル化反応について、鍵となる遷移状態を探索して高精度量子化学計算による詳細な解析を行うことで、「ルイス酸/塩基相互作用」「水素結合相互作用」「分散力相互作用」の協働効果(ハイブリッド型反応制御)を体系的に解明する。進捗に応じて実験研究と密に連携し、互いの成果・知見をフィードバックすることで、分子性触媒のさらなる先鋭化やハイブリット化に展開する。
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