公募研究
本研究は、Th17細胞のマスター転写因子であるRORgtの脂質リガンドを確定し、Th17細胞分化における脂質代謝の役割を正確に理解することで、脂質・RORgtを標的とした新たな創薬ターゲット・診断ツールの構築を目的とする。今年度の一連の研究で、以下に示す4つの新知見を見出した。1. RORgtの脂質リガンドを合成する代謝酵素の同定:T細胞株を用いたCRISPR/Cas9スクリーニングシステムを用いてRORgtの転写活性化能を指標として必須酵素の探索を行ったところ、5つの酵素が絞り込まれた。また、これら5つの酵素を同時に欠損させることでプライマリーTh17細胞分化が著しく抑制されることが示された。これらの酵素は脂肪酸の中でも不飽和脂肪酸の合成、およびリン脂質、リゾリン脂質への転移に必須となる役割をそれぞれ持っていることが示された。2. RORgt脂質リガンドの同定:研究成果1で示した5つの酵素を同時に欠損させたT細胞のリピドミクス解析を行い、特異的に低下する脂質を16種類見出している。これらの脂質を添加することによってTh17細胞分化誘導能の回復が認められるか解析をしたところ、3種類において回復することが認められた。3. 1.RORgt脂質リガンドによるマウス病態モデル解析:5つの酵素のうちの一つをCD4 T細胞特異的に欠損するマウスを作製した。このマウスを用いてTh17細胞依存的な自己免疫疾患マウスモデル EAE及びTh17誘導性の喘息病態が抑制されるか検討したところ、予想どおりEAE病態の劇的な改善が認められた。4. オーダーメイド脂質食による乾癬病態の増悪化:2で得られた脂質情報をもとに、当該脂質を多く含む脂質食を与えたマウスを用い、イミキモド誘導性の乾癬病態の評価を行った。1-3の結果と一致して、当該脂質を多く含む脂質誘導マウスでは乾癬病態の増悪化が認められた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件)
J. Allergy Clin. Immunol.
巻: 144 ページ: 549-560
10.1016/j.jaci.2019.02.024
Nat. Metabolism
巻: 1 ページ: 261-275
https://doi.org/10.1038/s42255-018-0025-4