研究実績の概要 |
代謝系と免疫系は密接に連携しているが、その連携において、代謝センサーmammalian target of rapamycin (mTOR)と自然免疫センサーとの連携の役割が明らかになりつつある。mTORはmTORC1、mTORC2という2つの複合体を形成する。mTORC1はリソソームに局在するアミノ酸のセンサーであると同時に、Toll-like Receptor (TLR)によるI型インターフェロン(Interferon, IFN)産生を誘導するシグナル伝達分子としても機能する。一方、mTORC2については、代謝センサーとしての役割さえも不明である。我々は既に、mTORC2が2重鎖RNAセンサーTLR3のマスター制御因子であるという結果を得ている。本研究において、mTORC2の代謝センサーとしての機能を検討するために、TLR3の応答と脂質代謝系との関係について解析を進めた。脂肪酸の合成に関与する遺伝子を欠損させると、TLR3によるNF-kBの活性化が低下することが分かった。この結果は、TLR3の応答と脂質代謝が密接に連関している可能性を示唆している。そこでその関係におけるmTORC1、mTORC2の役割について検討した。脂質非存在下でのTLR3の応答を検討したところ、TLR3のすべての応答が欠損しているという結果を得た。TLR3の応答すべてが脂質代謝に依存していることを考慮すると、mTORC1だけでは説明できない。我々はすでにmTORC2が直接TLR3に会合し、TLR3のすべての応答に関与していることを報告している。したがって、mTORC2が脂質代謝のTLR3応答に及ぼす影響に関与している可能性が示された。
|