公募研究
神経成長には膜脂質の連続的付加が必須であるが、脂質付加のメカニズムや合成の機構はほとんどわかっていない。また脂質特性に基づく、生物的な現象も直接的には観察できていない。当該研究者は神経成長を担う構造体である成長円錐における脂質の合成と脂質動態、それに基づく神経成長現象の調節を研究することを提案し、1年目は以下の主要な結果を得た。1)脂肪酸の鎖長伸長に関わる小胞体の酵素 GPSN2に対する新規抗体を作成した。ブロッティングレベルの使用は十分可能であったが、免疫染色ができるかどうかは確認中である。2) 脂質ラフトが超解像顕微鏡観察で、Z軸方向に張り出しているフィロポディアに局在することを証明した(投稿準備中)。このフィロポディアに軸索ガイダンス受容体が特異的に存在していたため、脂質ラフトを介した軸索ガイダンスのシグナル伝達機構の存在が強く示唆された。但し、パルミトイル化の変異体は表現型が予想と異なっていたため、再構築の予定である。3)GPSN2-KOマウスの交配を行った。ホモマウスが胎生致死であることを確認し、脳およびそれ以外の臓器で、ヘテロ体におけるリピドミクスを開始した(有田 誠(理研)らとの共同研究)。胎生致死となる時期を確認中で、脳構築以後であることは明らかになった、時期を選んで神経細胞の初代培養を行うこととした。4)脂質ラフトでの新たな解析中であるが、文献的にラフトへの局在が示唆されるalpha synucleinで実験を試み、結果はネガティブであった。
2: おおむね順調に進展している
ラフトの分子解析はやや遅れているが、超解像度観察による動態は予想より早く明らかになったので、全体としては順調と考えている。またGPSN2-KOは胎生致死のため、生物活性の解析がやや遅れたが、ヘテロ体のリピドミクス解析が可能となった点で、これを補っているといえる。
予定通り、3項目の解析予定を順次進めていく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 8件、 招待講演 7件)
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