本研究課題では、主にSIRT7を足がかりに、運動器(骨や筋肉)における中長鎖脂肪酸アシル化修飾タンパク質の重要性と、脂肪酸アシル化修飾の環境(加齢、運動、食事)による変化と運動器を基軸とした代謝疾患との連関を研究している。令和元年度は以下の研究を実施した。 1)中長鎖脂肪酸アシル修飾タンパク質の同定とその修飾調節機構の解明:中長鎖脂肪酸由来のアシル化修飾を受けるタンパク質はごく僅かしか報告されておらず、核内の転写因子やヒストンにおいては発見すらされていない。そこで、アシル化リジン残基特異的抗体を用いた免疫沈降法により、ある特定の中長鎖脂肪酸アシル化修飾を受ける新規タンパク質の取得を試み、この中鎖脂肪酸アシル化修飾を持つタンパク質を世界で初めて同定した。 2)運動器を基軸とした代謝調節における、SIRT7の役割とその分子機構の解明 A.骨組織:骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウスにおける腫瘍の程度を解析した。二年齢の骨芽細胞Sirt7 KOマウスはコントロールマウスに比べ、脾臓や肝臓の腫瘍が非常に低いことが判明した。 B.筋組織: 筋障害後の再生を解析した結果、サテライト細胞特異的Sirt7 KOマウスでは筋再生が低下していた。さらに、再生途中の組織像から、MyoD陽性細胞の顕著な低下が認められた。初代培養筋サテライト細胞を用いたin vitro分化実験では差が認められなかったことから、in vivoにおける周辺細胞との連関が、SIRT7によるサテライト細胞の増殖・分化に必要である可能性が示唆された。
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