研究実績の概要 |
カルジオリピン(CL)は脂肪酸が4つ結合したリン脂質であ理、ミトコンドリア内膜構造の形成・維持や呼吸鎖関連タンパク質などの機能調節に関わる。PGC-1αはミトコンドリア生合成を促進するため、同時にCLの量や質を調節している可能性があるが、CL生合成へのPGC-1αの関与には不明な点が多い。そこでPGC-1αが骨格筋CLの量と質に及ぼす影響、CL生合成に果たす役割を検討した。PGC-1αを過剰発現させた骨格筋ではCL量が著しく増加した。特にリノール酸を含むCLが顕著に増加した。また、CL生合成に関わる遺伝子のうちCDP-DAG合成を担うCds1、リノール酸をリン脂質に組み込むLPAAT2の発現が、PGC-1α過剰発現により増加した。CL生合成の律速であるCDP-DAG合成は、3種類の酵素(Cds1, Cds2, Tamm41)が触媒する。CL生合成に利用されるCDP-DAGは、Tamm41がミトコンドリア内膜で合成すると考えられているが、本研究においてTamm41の発現にPGC-1αの影響は認められなかった。CL生合成へのCds1の寄与は不明なため、Cds1をC2C12細胞に強制発現させ、その影響を調べた。その結果、Cds1の単独発現ではCL量は増えず、Cds1とPGC-1αを同時に発現させたとき、CL量とミトコンドリア膜電位が増加した。従って、PGC-1αは、Cds1の発現調節に加えて、CDP-DAGの利用にも関わる可能性が示され、これらの協調作用によってCL生合成が促進し、ミトコンドリア機能が高まったと考えられた。以上より、PGC-1αは、Cds1とLPAAT2の発現、ならびにCDP-DAG利用に関わる何らかの機能を調節することによって、CLの量と質を制御し、ミトコンドリア生合成に適応させていることが示唆された。
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