研究領域 | 脂質クオリティが解き明かす生命現象 |
研究課題/領域番号 |
18H04679
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大澤 匡範 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60361606)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多価不飽和脂肪酸 / アラキドン酸 / 電位依存性プロトンチャネル / NMR / ITC |
研究実績の概要 |
膜タンパク質の構造・機能は、しばしば脂質二重層内の微量脂質により調節される。近年、その微量脂質による機能調節には、極性の高い官能基を有するヘッドグループだけでなく、疎水性の高いアシル基の鎖長や不飽和度も含めた脂質分子全体の化学的性質・化学構造(リポクオリティ)によって担われることが分かってきた。しかし、アシル基部分と膜タンパク質との相互作用様式や機能調節メカニズムについては依然として不明な点が多く、構造生物学的手法による原子レベルでの解明が待たれている。そこで本研究では、電位依存性H+チャネルVSOP/Hv1 と調節因子であるアラキドン酸類との相互作用系、および、細胞の形態変化に重要な役割を果たすタンパク質Xと不飽和脂肪酸(PUFA)含有PIP2 の相互作用系を解析対象とし、脂質二重膜中での解析を可能とする独自の試料調製法であるナノディスクを活用したNMR による膜タンパク質とリポクオリティとの相互作用解析法を確立することを目的とする。 本年度は、VSOP/Hv1の性状解析、試料調製法、等温滴定型カロリメトリーの測定法の最適化検討を進めた。またタンパク質Xについては、主鎖アミド基のNMRシグナルの帰属を進めるとともに、メチル基のNMRシグナルの帰属を各種変異体のNMRスペクトルとの比較により行った。PUFA含有ナノディスクの調製法を確立し、タンパク質XとPUFA含有ナノディスクとの相互作用解析を行った。化学シフト変化およびシグナルの強度減少率の解析から、タンパク質X上のPUFA相互作用部位の同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度に着手したタンパク質XのNMR解析に計画以上の大きな進捗が見られた。Hv1の政情については、詳細に最適化検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質XとPUFA含有ナノディスクについては、常磁性緩和促進効果を利用したNMR手法により、さらに相互作用部位、結合様式を明らかにするとともに、その結合親和性の原因について、様々な観点から解析を進めていく。 Hv1とアラキドン酸との相互作用解析については、概ね試料最適化検討が終了したので、等温滴定型カロリメトリーによる相互作用解析を進めるとともに、Hv1-AAの直接の相互作用様式をNMRにより解明する。
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