研究領域 | 温度を基軸とした生命現象の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H04690
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
養王田 正文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 卓越教授 (50250105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シャペロン / sHsp / オリゴマー / フォールディング |
研究実績の概要 |
哺乳類由来のsHspは高温条件の他にリン酸化でも構造変化が誘導され、シャペロン機能が活性化する。CHO細胞由来sHspの野生型(CgHspB1_WT)およびリン酸化模倣体(CgHspB1_S15D)を大腸菌で発現し、種々のクロマトグラフィーで精製し、オリゴマー 構造を解析した。Size-exclusion chromatography - multiangle light scattering (SEC-MALS) による解析では、それぞれの分子量は約470kDaおよび約780kDaであると推定された。また、超遠心による分析では、それぞれの沈降速度は15.1S(403kDa)と18.2S(829kDa)であると計算され、SEC-MALSの結果と対応していた。さらに、small angle X-ray scattering (SAXS) による解析を行ったところ、Rg値は、それぞれ約5.84nm、約6.69nmであると計算された。これらの結果から、CgHspB1がリン酸化状態でより大きなオリゴマーコンホメーションに変化することを示した。Native Mass Spectrometryによる検証を試みたが、夾雑物が主に検出され、オリゴマー構造は確認できなかった。以前、我々は、CgHspB1_S15Sのオリゴマー構造が比較的不安定であり、室温においても小さなオリゴマー(ダイマー)に解離することを示した。しかし、濃度が高い条件では、オリゴマー構造が安定であることが分かっていた。本研究の結果、CgHspB1_S15SがCgHspB1_WTよりも大きなオリゴマー構造を形成することを示された。以前、CgHspB1_WTも高温条件で同様に大きな構造を形成することを観察しており、この大きな構造が解離する前のCgHspB1の活性化された構造の可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
sHspは、オリゴマーが高温条件またはリン酸化により構造変化することでシャペロンとしての機能を発現するが、どのような構造でシャペロンとして機能するか明らかになっていない。本年度の研究の結果は、このsHsp研究における最も重要な問題を解決する有力な鍵となると考えられるので、順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
CgHspB1などの哺乳類由来sHspのオリゴマー構造は多様であり、詳細な解析は遅れている。CgHspB1_WTおよびCgHspB1_S15SのX線結晶構造解析かCryoEMによる解析を試みる。哺乳類由来のsHspは部分的な構造変化による疎水性領域の露出により、多様な構造を形成すると考えられる。我々は以前エチレングリコール存在条件において、sHspのオリゴマー 構造を安定に維持して、疎水的相互作用を減弱することに成功している。この方法を利用して、構造解析を行う。また、sHspの温度依存的オリゴマー構造変化機構を解明を行う。リン酸化部位がN末端であることから、N末端領域が温度感受性部位であると考えられる。生育温度の異なるメタン菌のsHspのアミノ酸配列を比較したところ、N末端の配列が大きく異なることから、N末端配列を入れ替えたキメラ体および種々の変異体を構築し、温度感受性に関わるアミノ酸を特定する。
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