白色脂肪組織中の褐色脂肪“様”細胞(以下、ベージュ細胞)には、ミトコンドリアが多く存在し、熱産生器官として働く。マウスの場合、ベージュ細胞は、低温飼育により白色脂肪細胞から分化転換することで増加し、その後、高温に移行すると白色脂肪細胞へ退行する。こうした白色脂肪組織で起こるベージュ細胞の増減は、重要な環境温度への順応機構であるが、この過程で必ずダイナミックなミトコンドリア量の増減を伴う。ミトコンドリア量の増減は、ミトコンドリア生合成と分解のバランスで成り立つが、本研究では、細胞内の唯一のミトコンドリア分解機構であるミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)に焦点を当て、環境温度変化に応答して誘導されるマイトファジー(温度応答性マイトファジー)の制御機構や生理的意義をマウスモデルおよび培養細胞系を用いて解明することを目的とする。 マウス個体において、化合物等を投与することにより人為的にマイトファジーが誘導された場合、低温環境に応答して起こる白色脂肪のベージュ細胞化に異常を認めるかどうか、また、化合物等によりマイトファジーを抑制すると、高温環境に応答してベージュ細胞から白色脂肪に退行する過程にどのような影響があるかを観察するために、マイトファジーを誘導もしくは抑制する化合物のスクリーニング実験を行う。2019年度は、すでに確立されていたスクリーニング系をさらに効率化させ約1万の化合物ライブラリーのスクリーニングを開始した。
|