公募研究
線虫の温度記憶に主要な役割を果たす温度感覚ニューロンAFDは、過去の飼育温度依存的に温度刺激に応答して細胞内カルシウム濃度を変動させる性質を持つ。このカルシウム濃度変化にはその上流ではたらくとされるcGMPの生合成が必須であることが知られている。我々は、cGMPの蛍光プローブであるcGi-500を用いてAFDにおけるcGMPダイナミクスを観察し、AFDの感覚末端でカルシウムと同様に過去の飼育温度依存的にcGMP濃度が変動することを発見した。また、AFDの温度受容に必須であるとされる3つの Guanylyl Cyclase:GCY-8, GCY-18, GCY-23およびcGMPの分解を担うPhosphodiesterase (PDE) の変異体を用いてAFDの cGMP ダイナミクスを調べたところ、温度情報からcGMPダイナミクスへの変換にはGCY-8、GCY-18、GCY-23、PDE-5が関与し、cGMPダイナミクスからカルシウムダイナミクスへの変換にはPDE-1、PDE-5が関与することを明らかにした。さらに我々は、AFDから放出される神経ペプチドとグルタミン酸が下流の介在ニューロンAIYに興奮性と抑制性のシグナルを伝達し、AFDで作用するMASTキナーゼによってその相反するシグナルのバランスが調節されることで温度嗜好性が規定されていることを明らかにした。また、AFD-AIYのカルシウム応答パターンによって過去の摂食経験に依存した温度嗜好性がコードされていることが明らかとなった。さらに、AFDを起点とする温度情報が複数の異なる神経回路を介して様々な行動出力に変換されていることを示した。また、個体の老化に伴うAFDの形状と応答特性を解析した結果、老化個体において熱感受性Guanylyl CyclaseがAFDに凝集し、AFDの温度応答範囲が広くなることを示した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Genes to Cells
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