研究領域 | 温度を基軸とした生命現象の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H04696
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 貴之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30303845)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 温度生物学 / 末梢神経障害 / 末梢血流障害 / 末梢温調節機構 / 感覚異常 / 血管拡張薬 / ホスホジエステラーゼ阻害薬 / 冷過敏応答 |
研究実績の概要 |
1)末梢神経障害に伴う末梢血流/末梢温調節機構の破綻のメカニズム解明 オキサリプラチン反復投与による末梢神経障害(OIPN)モデルにおいて、末梢血流量および末梢温が投与開始4~6週間後から徐々に低下していくことを確認した。一方、OIPNモデルでの機械過敏応答発生の時間経過とは相関せず(投与開始1~2週以内に発生)、熱刺激に対する感覚障害(投与開始6~8週後に発生)に先行して生じることを明らかにした。また、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性神経障害モデルにおいて、投与開始から2~4週間後に一過性に後肢の血流低下が認められたが、この血流低下はTRPA1遺伝子欠損マウスでも変化が認められなかった。 2)末梢神経障害時の末梢温調節機構破綻と異常感覚との関連 Nav1.8発現神経特異的にGCaMP6fを発現するTGラットを用い、感覚神経活動をin vivoイメージングするため、TGラットの繁殖・維持を行った。また、in vivoイメージングの確立を目指したが、当初予定していた方法ではラットをうまく固定できなかったため、固定、観察方法の再検討を行ったたが、良好な結果は得られなかった。 3)末梢血流/末梢温調節機構破綻による末梢神経障害の進展 OIPNモデルに作用機序の異なる4種類の血管拡張薬を単回急性投与したところ、いずれも末梢血流量低下に対する改善作用とともに冷過敏応答が有意に抑制されたが、機械過敏応答に変化は認められなかった。次に、血管拡張作用が強く、作用持続時間の長いPDE5阻害薬タダラフィルを添加した飼料を作成し、タダラフィルの予防的投与の効果を検討した。その結果、タダラフィルの予防的投与は、機械過敏応答および冷過敏応答だけでなく、投与開始6~8週後に生じる熱刺激に対する感覚障害の発生も抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Nav1.8発現神経特異的にGCaMP6fを発現するTGラットを用いたin vivoイメージングの確立において、感覚神経を可視化するため、ラットの顕微鏡観察実験を行っていたところ、当初予定していた方法では顕微鏡ステージにラットをうまく固定できず正しく観察実験を行えなかった。そのため固定、観察方法の再検討を行い、顕微鏡の固定器具を改良などを行ったが、良好な結果を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
計画2)末梢神経障害時の末梢温調節機構破綻と異常感覚との関連について、Nav1.8発現神経特異的にGCaMP6fを発現するTGラットを用いたin vivoイメージングについては、今後も観察方法を含め検討していく。一方、計画1)末梢神経障害に伴う末梢血流/末梢温調節機構の破綻のメカニズム解明、および計画3)末梢血流/末梢温調節機構破綻による末梢神経障害の進展、については一部を除きほぼ計画通りに検討は進んでいるため、こちらに優先的に人員を割いて検討していく。
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