研究領域 | 温度を基軸とした生命現象の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H04699
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西頭 英起 宮崎大学, 医学部, 教授 (00332627)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
褐色脂肪細胞のミトコンドリアでの熱産生は脱共役を伴うため、ミトコンドリア品質が一時的に悪化する。そのために何らかのミトコンドリア変化をセンシングし、下流へシグナルを伝えることによってミトコンドリア品質が管理されていると想定された。本研究では、褐色脂肪細胞において、どのようにミトコンドリアが品質管理され熱産生システムの恒常性が維持されているのかについて研究を実施し、次の点を発見した。 p-PERKmito抗体の作製と活性化場の同定:温度刺激依存的なPERKリン酸化状態の変動をモニターするため、ミトコンドリアストレス特異的PERKリン酸化部位に対する抗体を作製した。この抗体を用いて、褐色脂肪細胞でのアドレナリン受容体刺激によるPERK活性化の場を超解像顕微鏡、免疫電顕により検討した。 p-PERKmito抗体を用いた熱ストレス依存的活性制御因子の探索:ミトコンドリアからの熱産生刺激を受容し、PERKにストレスを伝達する分子の探索を目指し、ゲノムワイド・ハイスループットスクリーニングに供するための検出系を構築した。 p-PERKmitoに関わるシグナル分子メカニズムの解明:既に候補としている分子群について、褐色脂肪細胞の分化依存的およびアドレナリン受容体刺激依存的なPERK活性化への関与をsiRNA、CRISPR/Cas9、阻害剤を用いて検証し、幾つかの候補分子を獲得した。また、それぞれの分子とPERKの結合が、小胞体-ミトコンドリア接触場においてみられるか、Proximity ligation assayにより観察し、陽性シグナルを検出した。 PERKmito-mutantマウスの作製:ミトコンドリア産生熱によるPERK活性化とそのシグナル伝達の必要性を個体レベルで解析するため、CRISPR/Cas9によりPERKmito-mutant KIマウスを作製しF0マウスの作出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p-PERKmito抗体の作製と活性化場の同定:温度刺激依存的なPERKリン酸化状態の変動をモニターするため、ミトコンドリアストレス特異的PERKリン酸化部位に対する抗体を作製し成功した。この抗体を用いて、褐色脂肪細胞でのAR刺激によるPERK活性化の場を超解像顕微鏡、免疫電顕により検討した。 p-PERKmito抗体を用いた熱ストレス依存的活性制御因子の探索(系の構築):ミトコンドリアからの熱産生刺激を受容し、PERKにストレスを伝達する分子の探索を目指し、ゲノムワイド・ハイスループットスクリーニングに供するための検出系を構築し終えた。 p-PERKmitoに関わるシグナル分子メカニズムの解明:既に候補としている分子群について、褐色脂肪細胞の分化依存的およびAR刺激依存的なPERK活性化への関与をsiRNAを用いて検証し、それぞれの分子とPERKの結合が小胞体-ミトコンドリア接触場においてみられるか、Proximity ligation assayにより観察し、幾つかの分子から陽性の結果を得た。 PERKmito-mutantマウスの作製:ミトコンドリア産生熱によるPERK活性化とそのシグナル伝達の必要性を個体レベルで解析するため、CRISPR/Cas9によりPERKmito-mutant KIマウスを作製を開始し、F0マウスの作出に成功した。 以上の成果により、概ね順調な進展が得られていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア発熱によるPERK下流での遺伝子発現制御とミトコンドリア品質管理機構の解明 PERK KD褐色脂肪細胞でARアゴニスト依存的に発現変動する遺伝子について、ゲノムワイドRNA sequence解析を終えている。その中には、申請者らが既に解析済みのUCP1やCOXⅣなども含まれており、実験結果は妥当と考えられる。前年度に解析されるmTORC2-AKT経路やPP1Aについても同様の解析を行った上で、Gene ontology解析などにより、熱産生によるPERK経路を介したミトコンドリア品質管理に重要な分子を同定する。さらにミトコンドリア恒常性維持に対する各遺伝子群の必要性について検討する。 PERK活性化へのミトコンドリア熱産生の必要・充分性に関する検証 ミトコンドリア熱産生とPERK活性化の局在一致について、オルガネラ局型蛍光性ポリマー温度計を用いて検証する。本実験に先立ち、既にオルガネラ非局在型ポリマーを用いて、褐色脂肪細胞熱産生へのPERKの必要性について結果を得ている。また、ミトコンドリア局在型ポリマーの温度吸収特性を利用して、ミトコンドリア発熱の必要性について、p-PERKmito抗体との組み合わせにより検討する。さらに、1480 nm赤外レーザー光照射による細胞内局所加温システムを用いて、ミトコンドリアでの発熱のPERK活性化への充分性についても検討する。
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