公募研究
本課題では、シロイヌナズナを用いて、高温・低温などのストレス適応におけるSGやPBなどのRNA顆粒による転写後調節機構の解析を行う。これまでに得られた研究実績は以下の通りである。凍結ストレス耐性を示すxrn4変異体の原因遺伝子を特定するために、無処理及び凍結ストレス処理サンプルを用いたトランスクリプトーム解析を行った。その結果、低温誘導性であり、かつxrn4変異体で発現の上昇した遺伝子を51遺伝子見出した。さらに同条件でmRNAの分解速度を解析したデータと比較することで、野生株では分解されるはずが、xrn4変異体において分解されずに残った遺伝子を調べたところ,12個に絞り込め,これらがXRN4のターゲットであると考えられた。今後これら遺伝子の機能解析を行う予定である.SGの因子であるUBP1bの解析では、高温ストレス耐性を示すUBP1b過剰発現植物の原因遺伝子の候補を特定するために、野生株とUBP1b過剰発現植物を用いた無処理および高温ストレス処理におけるトランスクリプトームを行った。その結果、高温誘導性であり、かつUBP1b過剰発現植物で発現の上昇した117遺伝子を見出した。さらにそれらのRNA安定化を解析したところ、熱ショックタンパク質とストレス関連遺伝子の2つの遺伝子が高温ストレス耐性を示す原因遺伝子であることが示唆された。また、これらの遺伝子がUBP1bの直接のターゲットであるか確認するためにRNA免疫沈降(RIP)を行う予定であるが、このRIP法は、国際共同研究によりJulia Bailey-Serres教授(カリフォルニア大、Riverside校)らから技術を習得した。さらにubp1b 欠損変異体の解析では、ubp1a/1b二重変異体を作出し、今後ストレス耐性試験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
連携研究者と密に相談しながら研究を進めているため。
1)凍結耐性を示すxrn4変異体の原因遺伝子の同定と分子機構の解明:野生株とxrn4変異系統に関して、無処理および凍結処理過程における統合オミックス解析(トランスクリプトームなど)を行う。これまでに、無処理及び凍結処理サンプルを用いた解析などにより、野生型では分解されるはずがxrn4において分解されずに残った遺伝子、つまりXRN4のターゲット候補を12個見出した。これら候補遺伝子の低温における分解速度を野生型とxrn4変異体で比較し、xrn4変異体で分解速度が遅くなっているターゲットを特定する。特定した遺伝子が凍結耐性に関与するかどうか、その遺伝子の欠損変異体を用いて凍結耐性試験により機能解析する。2) 高温耐性を示すUBP1b過剰発現植物系統(UBP1b-ox)の直接の原因遺伝子の同定と分子機構の解明:野生株とUBP1b-oxに関して、無処理および高温処理過程における統合オミックス解析(トランスクリプトームなど)を行い、高温耐性を示すUBP1b-oxの原因遺伝子候補を特定する。3) RNA免疫沈降(RIP)によるSGに保持されるUBP1bの直接の標的mRNAの同定:UBP1b-oxのタグであるVenus特異的抗体を用いてSG形成条件下でのRIP 解析を行い、UBP1に結合するmRNAを分離する。4) 3つのUBP1遺伝子(UBP1a, UBP1b, UBP1c)の多重変異体の表現型解析:これまでにubp1a/1b二重変異体は作出済みで、今年度は三重変異体の作出と並行して、二重変異体のストレス耐性試験を行う予定である。一重変異体および作成した多重変異体を用いてストレス耐性およびABA感受性試験を行う。多重変異体においてより顕著な表現型またABA高感受性が観察された場合、トランスクリプトームを解析し、SGに保持される新規な標的遺伝子候補を探索する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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