研究領域 | 温度を基軸とした生命現象の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H04706
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
砂川 玄志郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (70710250)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 休眠 / 冬眠 / 能動的低代謝 / CAGE解析 / 低温耐性 / マウス |
研究実績の概要 |
哺乳類が低体温を維持するためには低体温制御と低温耐性が必要となる。本課題では、マウスの低体温表現型の遺伝性とマウス近交系の低体温表現型の相違に注目し、低体温制御・低温耐性に関与する遺伝子が存在するという仮説をたて、遺伝学的手法を駆使することでそれぞれに関与する遺伝子の同定を試みている。当初に立案した3つの計画を順次遂行している。計画1「休眠マウス組織のトランスクリプトーム解析による低体温制御遺伝子の推定」においてマウスを絶食性休眠に誘導し、正常体温時と低体温時の筋肉組織をサンプルしCAGE解析を行ったところ、休眠時に遺伝子発現が上昇する遺伝子226個と遺伝子発現が低下する遺伝子61個を同定した。さらに、休眠を人為的に阻害する「断眠実験」をおこなうことで遺伝子を絞り込み、候補となった遺伝子の遺伝子改変動物を作成し、表現型を確認している。計画2「マウス培養細胞を用いた低温耐性遺伝子の包括的検索」において、個体として低温耐性を示すマウス近交系(STM2とMYS/Mz)からES細胞を樹立し、ES細胞の低温耐性を評価する系を樹立した。計画3「遺伝子改変動物を用いた低体温制御遺伝子・低温耐性遺伝子の検証」においては、上に述べたように計画1で候補となった遺伝子のKOマウスをCRISPR/Cas9システムを用いて作成し、表現型解析を行っている。また、表現型解析のスループットをあげるために非侵襲呼吸パターン測定から酸素消費量を機械学習による推定するシステムを開発している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた計画が順調に進んでおり、大きな問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は3つの計画を順次すすめていく。計画1は、筋肉以外の組織を対象にしたいCAGE解析を中心に実験を進める。申請者らは絶食を介さない新しい休眠マウスモデルの確立に成功したため、進捗によってはこれまでの絶食誘導性休眠との比較実験も行い、低温耐性遺伝子の検索精度を更に高めたい。計画2に関しては、ES細胞を低温で培養した際の代謝評価を行い、細胞分裂速度のみならず、培地組成の経時変化を確認し、低温耐性を有するES細胞を樹立し、ウイルスによるKO実験につなげたい。計画3に関しては現在おこなっているKOマウスの樹立を引き続き行い、低体温制御機構の理解の端緒としたい。また、実験1でさらに候補としてあがってくる遺伝子も同様に検証を行いたい。
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