研究領域 | 染色体オーケストレーションシステム |
研究課題/領域番号 |
18H04713
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小布施 力史 大阪大学, 理学研究科, 教授 (00273855)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クロマチンボディー / HP1 / ヘテロクロマチン |
研究実績の概要 |
私たちがヘテロクロマチン因子の一つとして同定したAHDC1を増量することにより、まるいヘテロクロマチンボディーがほどけて太いひも状になることに気がついた。このことは、AHDC1がHP1に結合してその性質を変えることが、ヘテロクロマチンボディーの形態に影響を及ぼしていることを示唆している。本課題では、ヘテロクロマチンボディーの成り立ちを、AHDC1がヘテロクロマチンボディーの形成にどのように働きかけているのかを明らかにしつつ、1)内在する物理化学的な性質や構造、2)核や核小体など核構造との親和性、3)ボディーの外から働きかける力や構造、の3つの要素に還元しながら行う。また、AHDC1や核構造との相互作用に寄与する因子の増減でヘテロクロマチンボディーの形態と核内配置を操作することにより、ヘテロクロマチンボディーの形態や配置と、転写、複製、修復などクロマチン上の制御について議論することを目指す。 当該年度は、以下の結果を得た。ヘテロクロマチンボディーの状態を客観的に比較するために、おもにマウスNIH3T3細胞を用いて、クロモセンターに着目して解析することとした。この細胞に、リポフェクションを用いてAHDC1を一過的に発現すると、丸いクロモセンターがひも状に変形する。また、画像解析により、この変化を定量的に測定することに成功した。HP1、SCAIに結合できない点変異、AT-hookの点変異、それらの組み合わせた変異タンパク質の発現系を用いて検証したところ、HP1結合能とC末側に散在する配列の2つの要素が、クロモセンターの形態変化を及ぼす活性に必須であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AHDC1のクロモセンターの形態、存在様式への影響を観察するのに適した細胞を見出し、機械学習による画像解析により、客観的に形態、存在様式を計測、評価できる系が確立した。この系を用いて、AHDC1上の、HP1結合能とC末側に散在する配列の2つの要素が、クロモセンターの形態変化を及ぼす活性に必須であることを見出した。このように、ほぼ計画通りに進捗していること、機械学習による定量評価が予想以上に良好であることが判明し、この点においては計画以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、C末端からAHDC1を決失すると、クロモセンターの変形活性を徐々に失うことから、活性に必要な要素が散在していると想定していが、その実態を明らかにすることを目指す。さらに、増量した時の表現型に加えて、減量した時の表現型を観察するために、AHDC1のノックアウト細胞をNIH3T3を用いて作成する。クロモセンターはペリセントロメア領域のメジャーサテライトに形成されるヘテロクロマチンであることから、セントロメア機能やメジャーサテライトからの転写に着目して、AHDC1の機能を洗い出す。
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