研究領域 | 染色体オーケストレーションシステム |
研究課題/領域番号 |
18H04716
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 達郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50452420)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 相同性依存的修復 / DNA二重鎖切断 / ミスマッチ修復 / ツメガエル卵抽出液 |
研究実績の概要 |
相同性依存的修復(HDR)はDNA二重鎖の切断に応答する重要なDNA修復機構であり、その正確性は染色体構造の維持にきわめて重要である。類似するが同一でない配列間のHDRは中間体にミスマッチを生じるが、ミスマッチ修復機構はこのミスマッチを手がかりに類似配列間のHDRを抑制し、正しい配列間のHDRを促進する。本研究では、この反応の分子メカニズムを解明するため、特にDNA中間体に焦点をあて、どのようなDNA産物がどのようなタイミングで生じるかを、次世代シーケンス技術を活用して解明することを目指した。 類似配列間のHDRが起こると、中間体には必ずDNA塩基ミスマッチが生じる。HDRが進行して修復産物が生じた場合、このミスマッチは残されたままになるか、あるいは修復されるはずである。そこで、本年度はまず修復の最終産物のミスマッチ塩基解析からスタートした。産物をPCR増幅し、得られた断片をもとにサンガー法およびMiSeqペアエンドリードによる解析を行った。予想通りミスマッチ塩基の修復が見られ、DNAの3'末端に近いほどより効率よく修復を受ける傾向が観察された。また、いくつかの重要な因子を免疫除去したところ、これらの傾向に変化が現れた。今後、変化の原因をさぐることで、これらの因子の働きに迫れると予想される。また、修復の方向性を正確に推定するため、鎖特異的なシーケンスにも取り組んでおり、これに関しては系の構築が完了したところである。さらに、HDR中間体DNAの5′および3′末端を網羅的に特定するために実験系の構築を進めている。これらの末端の位置と頻度は、鎖の削り込みの速度やHDRの進行を直接的に反映するはずであり、この解析から類似配列間のHDRが同一配列間のHDRと比べてどのような作用点で阻害を受けるのかを解明できると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試験管内一本鎖アニーリング産物のミスマッチ塩基修復については配列解析実験系を確立し、おおよその傾向がわかってきた。一本鎖断点を特定する実験系については系の構築を進めている段階である。次年度の解析に向け、おおよそ順調に準備が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
先年度は、組換え産物の塩基配列解析に注力して研究を進め、ミスマッチ修復経路が働かない場合や、類似配列間の組換えが阻害されない場合にどのような組換え産物が生じるかが分かってきた。本年度は、それらの成立過程に焦点をあて、類似配列間の組換えを阻害する反応の中間体解析を行う。
|