研究領域 | 共鳴誘導で革新するバイオイメージング |
研究課題/領域番号 |
18H04726
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅沼 大祐 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10611204)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 蛍光イメージング / 近赤外蛍光 |
研究実績の概要 |
近赤外蛍光は、組織透過性の高さや光の散乱の小ささ、夾雑する自家蛍光の少なさから生体イメージングへの応用に極めて有用である。本研究は、生体深部観察に適した近赤外蛍光を用いて、生体内で特異性の高い細胞標識を可能とするケミカルタグ技術を開発することを目的とする。また、実証応用としてマウス全身でのがんの転移の様子を経時観察することを可能として、提案技術の有用性を示す。これまでに独自に取得した抗消光団一本鎖抗体であるケミカルタグタンパク質、および、ケミカルタグに結合すると近赤外蛍光を発するケミカルプローブについて特性の精査を行った。その結果、ケミカルプローブはケミカルタグ結合時に、近赤外蛍光タンパク質で最長蛍光波長を有するiRFP720と同程度の蛍光波長を有し、また、iRFP720と比べて3倍近い蛍光量子収率を有していることを明らかにした。卵巣がん由来でリンパ節への高い転移性を示すOV2944-HM-1細胞株をもとに、レンチウイルスを用いた遺伝子導入、クローニングを通して、ケミカルタグを発現する安定細胞株を樹立した。ケミカルタグ発現OV2944-HM-1細胞にケミカルプローブを加えて蛍光イメージングを行い、競合実験等からプローブがケミカルタグ発現細胞を特異的に近赤外蛍光で染色できることを確認した。また、分子構造スクリーニングを基にケミカルタグに対してEC50が10-9 Mオーダーとなる高親和性ケミカルプローブを開発した。ケミカルタグ発現OV2944-HM-1細胞を後肢の足蹠に移植したモデルマウスを作製し、高親和性プローブをモデルマウスに投与して近赤外蛍光イメージングを行った。経時的に観察を行うことにより、OV2944-HM-1細胞が膝窩リンパ節に転移した様子を可視化することに成功した。生体深部の観察にさらに適したより長い波長領域での蛍光イメージングが可能なケミカルプローブの開発に向けて、計算化学を利用した分子探索を行い、有用な分子母核を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近赤外蛍光イメージングのためのケミカルプローブ・ケミカルタグのプロトタイプ技術を順調に構築し、モデルマウスへ応用することによりがんの転移を可視化することができた。また、最終年度となる次年度に向けて、生体深部の観察にさらに適した長波長蛍光イメージングが可能なケミカルプローブの開発のための準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りにケミカルプローブの分子開発を進め、in vitroでの分光学測定や培養細胞を用いた蛍光イメージングから特性の検証を行う。前年度に確立した評価系を利用することでケミカルタグ技術の効率的な開発を推進する。実証応用としてマウス全身でのがんの転移の様子を経時観察することを可能として、提案技術の有用性を示す。
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