公募研究
本研究では、時系列全体を通じた大域的な最適化手法を活用して、線虫頭部神経のカルシウムイメージングの4D動画に含まれる細胞核を高精度に追跡し、神経活動を正確に定量する手法を開発することを目指した。2018年度は、大域的な追跡手法を実装し、定性的な比較を行った。検出と対応付けによる一般的な追跡手法では、全ての対象物が全ての時点で正しく検出されていることが前提となるが、線虫の頭部神経は密集しているため、正確な自動検出は極めて難しく、各時点でのエラーが累積してしまう。代表者らは、ある時点での正確な検出結果から、画像の輝度分布を混合正規分布モデルで近似し、次の時点の画像に対する混合正規分布の最適化によって追跡を行うSequential法を過去に開発したが、一端生じた追跡エラーが時間方向に伝播するため、精度が不十分であった。エラーを伝播させないためには開始時点のモデルを他時点の画像に直接適用すればよいが(Parallel法)、大きな変形に弱くなってしまう。そこで類似度に従って画像を並べ替え、木構造を形成して追跡するTree法を開発した。似た画像を辿ってモデルを適用することでエラーを低減でき、またエラーの伝播を木構造の分枝内に限局させて抑制できる。また画像の非剛体レジストレーションによって画像の局所変位を計算し、最適化の前に各正規分布を局所変位に沿って移動させることで、最適化による追跡のエラーを大きく抑制できた。これらの手法を組み合わせて、線虫頭部神経のカルシウムイメージングの4D動画に含まれる細胞核の追跡に適用した。Sequential法では非剛体レジストレーションの繰り返しによって局所変位のエラーが蓄積してしまうことが判明した。またParallel法では大変形に弱いという特性が確認された。Tree法では大変形への対応とエラーの限局・低減を同時に達成できた。
2: おおむね順調に進展している
当初計画の通り、大域的な追跡手法を実装し、定性的な比較を行うことができたため。
大域的な追跡手法を多数の4D動画に適用して定量的な比較を進める。またNet法など新たな大域的追跡手法の実装と比較検討を進める。
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http://molecular-ethology.bs.s.u-tokyo.ac.jp/labHP/J/JResearch/