研究領域 | 共鳴誘導で革新するバイオイメージング |
研究課題/領域番号 |
18H04742
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 画像解析 / 機械学習 / 深層学習 / セグメンテーション |
研究実績の概要 |
本研究は既存の画像解析・機械学習アルゴリズムでは実現されていない、細胞種に依らない汎化性が高い高精度細胞セグメンテーションアルゴリズムの構築をAutoencoder(自己符号化器)を用いることで実現することを目的としている。 平成30年度は多層ニューラルネットワークの構造、学習アルゴリズムの適否について詳細に検討し、検討を行ったアルゴリズムから順次実装を進めた。当研究課題において開発を行うセグメンテーションアルゴリズムの中核をなすのは多層ニューラルネットワークと自己符号化器となる。当該年度では多層ニューラルネットワークの一種であるU-Netをベースとしたアルゴリズムの検討を行った。 U-Netは大局的な特徴を抽象化して学習するとともに、局所的な特徴も合わせて学習することが可能なアーキテクチャであり、その独自なネットワーク構造により高い性能を示すが、機械学習が本質的に持っている問題点である「学習効果は与える学習データに強く依存する」という点は未解決である。当該年度はU-Netの構造を保ちつつ、自己符号化が可能なネットワークの検討を行い、Pythonによる深層学習フレームワークである Chainer を用いて実装を行った。 学習データに関しては、HeLa細胞の顕微鏡画像を撮像しセグメンテーションの正解データを用意し、セグメンテーションの学習を行った。また他の細胞種(NIH3T3, SH-SY5Y等)の顕微鏡画像を撮像し、自己符号化器にて教師なし学習を行い、精度評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
畳み込みニューラルネットワークを用いた細胞セグメンテーションアルゴリズムである U-Net と自己符号化器を結合した学習モデルの構築を行った。モデル前半部は自己符号化器として正解ラベルを用いずに NIH-3T3 細胞画像を学習させ、モデル後半部は NIH-3T3 の自己符号化器で得られた特徴を基に HeLa 細胞画像の正解ラベルを用いて学習を行った。 得られた三つの学習済みモデルで NIH-3T3 のセグメンテーションを行い精度を評価した。 セグメンテーションの評価指標であるIoUを用いてセグメンテーション精度を評価した。HeLa を学習させた U-Net モデルの IoU が 0.609 であったのに対し、本研究のモデルは 0.496 であり、先行研究を上回らなかった。 本研究のモデルが高精度にセグメンテーションを行えなかった理由を明らかにするべく、学習済みモデルの解析を行ったところ、モデル前半部の自己符号化器の学習が適切に行われなかったことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提案したアルゴリズムは、先行研究のU-NetモデルにHeLaを学習させ、NIH-3T3をセグメンテーションした場合の精度を上回らなかった。今年度は、自己符号化器モデルの構造の再検討や入力画像へのノイズ付加によって、自己符号化器がセグメンテーションに有効な特徴を抽出するような改良を計画している。 具体的には、まずNIH/3T3の顕微鏡画像で自己符号化器モデルを学習させ、NIH/3T3の特徴を抽出した後、自己符号化器で抽出した特徴を各層ごとに連結したモデルを作成することを計画している。続いて、作成したモデル内の自己符号化器で抽出した特徴を利用しつつHeLaの正解ラベルを用いて学習させることで自己符号化器で抽出した特徴を利用して細胞画像をセグメンテーション可能なモデルの構築を計画している。
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