公募研究
本年度は、蛍光やポジトロン断層撮像法(PET)により生体脳組織における分子動態や生理機能をマルチモーダルに可視化できるレポーターイメージング技術の開発を目指し、1) 標的レポーター蛋白質をFluorogenicにラベル可能な蛍光性プローブの開発、2) 蛋白質間の相互作用を評価可能なSplit型バイオセンサー分子システムの構築、の2点に取り組んだ。1) 標的レポーター蛋白質をFluorogenicにラベル可能な蛍光性プローブの開発生体脳に発現させた標的レポーター蛋白質を高いS/N比で検出可能で脳移行性の良い蛍光性プローブ開発を目指し、プローブ基本骨格に多重結合とアリール基を付加する事で可視領域に吸収特性を持たせた新規化合物の合成を実施した。当初設計したいくつかの候補化合物の合成は難航したが、この過程で予期せず脳移行性を飛躍的に改善させる骨格構造が見出された為、この新規骨格をもとに改めて蛍光性プローブ開発を進めている。2) 蛋白質間の相互作用を評価可能なSplit型バイオセンサー分子システムの構築標的レポーター蛋白質の応用性を広げる為、蛋白質間の相互作用を検出可能なSplit型バイオセンサー分子システムの構築に取り組み、試行錯誤を重ねながら達成する事ができた。現行の色素標識プローブを用いてライブセルイメージングでの検証を重ねた結果、Split型分子の自発的な多量体形成や薬理学的に誘導された二量体化を迅速かつ高感度に蛍光イメージングできる事が見出された。引き続き応用性を検討しつつ、生体脳における有益性も視野に入れて検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
蛍光型プローブ候補化合物の開発を進める過程で予期せず新しい化合物構造の特性と可能性が見出され、生体脳イメージングにより最適化された性能へと改善する見込みが得られた。また、Split型レポーター分子の開発も順調に実現された事により、様々な神経生理現象を可視化し機能制御し得る可能性も広がった。
新規蛍光性プローブ開発とレポーター蛋白質の遺伝子改変を通じた共進化の可能性を引き続き検証しながら、生体脳イメージングにより最適化された性能への改善を推進する。蛋白質間の相互作用を検出可能とするSplit型センサー分子の応用性は高く、生体脳組織における神経生理や機能制御の可能性も念頭に新たな展開が期待される。ポジトロン断層法(PET)も活用し、生体脳深部における標的レポーター分子の開発にも合わせて取り組む。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Genes & Development
巻: 33 ページ: 365~376
DOI:10.1101/gad.320077.118