公募研究
脊索動物ワカレオタマボヤ (以下、オタマボヤ) の体の単純さ、発生の速さなどを活用した3D形態形成の解明を試みた。(1) 内胚葉と外胚葉の上皮がつながり「くち」ができるしくみ、(2) 表皮細胞から、3D構造をもった接餌フィルター(ハウス)が分泌される原理、の2つの課題に取り組み、以下の成果を得た。(1)「くち」の3D形成オタマボヤの口は、わずか数十個の細胞でできている。また幼生の孵化から7時間以内に出来上がるため、ライブイメージングに有利である。開口過程を観察したところ、内胚葉細胞 (oral plugと命名)が外部に露出することが分かった。さらに核やアクチン(細胞膜とほぼ同義)のライブイメージングを行ったところ、体幹部の前端に「背腹方向に分裂する表皮細胞(lip precursor cellsと命名)」が2つあり、それらの娘細胞がそれぞれ上唇、下唇になることを見出した (Dev Genes Evol., 2020)。(2)ハウスの3D形成オタマボヤは表皮細胞から分泌するハウスというフィルター構造の中に棲む。体幹部は、折り畳んだ状態のハウス (ハウス原基)を常に2-3枚まとっており、外側の1枚を膨らまして使用する。ハウスはセルロースを含むことが知られている。セルロースの蛍光染色を行ったところ、海水の入り口 (inlet filter)に縦糸・横糸でできた格子状の網目を見いだした。この格子構造は、ハウス原基にも存在していた。さらに走査型電子顕微鏡 (SEM)で観察したところ、これらの糸は、直径数十ナノメートルの繊維が組み合わさってできていた。またハウスの他の領域も、微細な繊維が編み込まれてできていることが分かってきた。これらの結果は、ハウスが「繊維状の素材」によりできていることを示すものである。理論系の計画班との連携によりハウス形成の作業仮説を立ち上げることに成功している。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件)
比較内分泌学.
巻: 172 ページ: 28-30.
Development Genes and Evolution.
巻: 230 ページ: 315-327.
10.1007/s00427-020-00667-4,
Development Growth and Differentiation.
巻: 62 ページ: 450-461.
10.1111/dgd.12689
Developmental Biology.
巻: 460 ページ: 155-163
10.1016/j.ydbio.2019.12.005
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.
巻: 117 ページ: 4188-4198
10.1073/pnas.1916858117
Nucleic Acids Research.
巻: 48 ページ: D668-D675.
10.1093/nar/gkz955
巻: 170 ページ: 85-87.
10.5983/nl2008jsce.46.85_2
academist Journal.
巻: 0 ページ: 0
巻: 171 ページ: 117-118.
10.5983/nl2008jsce.46.117