研究領域 | 生物の3D形態を構築するロジック |
研究課題/領域番号 |
18H04765
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
萩原 将也 大阪府立大学, 研究推進機構, 講師 (00705056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 三次元培養 / 多面観察 / 培養CUBE / マイクロ流体チップ / 初期制御 |
研究実績の概要 |
当該年度はフォトリソグラフィーで作成したマイクロモールドを利用して、培養CUBE内に注入した細胞外マトリックスに任意の型を作成し、そこに高濃度に濃縮した細胞を注入することにより、三次元空間における細胞集団の初期形状を20ミクロン以内の精度で制御する手法を構築した。本手法を用いて、気管支上皮細胞を円柱状に制御して培養CUBE内で培養したところ、従来はバラつきが非常に大きかった気管支上皮細胞が形成する分岐パターン(分岐方向、太さ、長さ、分岐間ピッチ)が均一に形成され、実験再現性が飛躍的に向上した。さらに培養CUBE内で形成された分岐パターンは、CUBEを多面から観察することにより、ミリメートルサイズの大域のサンプルでありながら、x-y-z方向においてアクチンフィラメントが確認できるくらいの高精度なイメージングを達成できる。以上の再現性が高く、高精度なイメージングが可能なプラットフォームの構築により、発生した多細胞集団のパターン形成について、定量的な計測が可能となった。 さらにマイクロ流体チップ内に本培養CUBEデバイスが挿入可能な空間を設けることにより、ワンタッチで三次元培養中のサンプルをマイクロ流体チップに統合・分離可能なシステムを構築した。これにより、培養・イメージングをCUBE内で行い、細胞周りの分子濃度勾配などの環境ダイナミクスをマイクロ流体チップで制御することが出来る。従来のマイクロ流体チップと異なり、三次元培養中のサンプルは任意のタイミングでマイクロ流体チップに入れ込むことができるため、例えばサンプルが十分発達してから濃度勾配制御を行うためにマイクロ流体チップ内に入れ込み、制御実験終了後はCubeごと取り出して、多面イメージングを行うことにより解析をするといった非常に汎用性の高いシステムである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画にあった、三次元培養プラットフォームの要素技術である、培養CUBEデバイスを用いた多面観察による大域高精度イメージング、初期細胞制御による細胞パターン形成の再現性向上、マイクロ流体チップによるダイナミック制御は既に達成済みであり、1年目で計画の8割以上進展しすることが出来た。さらに気管支上皮細胞における分岐パターン形成では、EGFによる刺激でマクロピノサイトーシスが誘導され、分岐方向を決定していることを明らかにした。この結果と上記プラットフォームを組合わせることにより、応用として分岐パターン形成制御ができるなど更なる発展を見込むことが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築したプラットフォームを気管支上皮細胞の分岐形成に応用することにより、分岐パターンの定量解析ができるようになった。そこで仮説した数理モデルから計算したシミュレーション結果と実際の分岐パターンの結果とを繰返し比較することにより、分岐パターンメカニズムを明らかにすることを目指す。さらにマイクロ流体チップを用いたダイナミック分子濃度制御により、分岐パターン形成制御を行うことを目指す。
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