研究領域 | 植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム |
研究課題/領域番号 |
18H04785
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
清水 健太郎 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 客員教授 (10742629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トランスクリプトーム / 植物 |
研究実績の概要 |
植物による環境刺激の認識と記憶の解明のため、これまでは主に実験室で個々の環境要因を制御する実験が行われてきた。しかし、複雑に変化する野外環境での植物の反応を理解するためには、 野外で生育する植物を調べるための方法論が必要である。本研究の目的は、実験室だけでなく、野外変動環境で分子生物学実験を行うことであり、モデル植物の知見を基盤として非モデル植物の解析を行う。モデル植物シロイヌナズナのフロリゲン遺伝子は、日長などの環境条件に応答して花成をもたらす重要な遺伝子としてこれまでに実験室で多くの研究者によって解析されており、1日の中では夕方に発現のピークがあると考えられていた。今回、野外環境で24時間にわたって3時間ごとにRNA用の組織を採取し、FT遺伝子の発現解析を行った。その結果、実験室とは異なり朝に発現のピークが見つかった。この結果から、より野外の条件を反映する実験室栽培条件も同定できた。この国際共同研究は、国内外のメディアによって報道された。そして、日長の年変動がほぼ存在しない熱帯において、植物がどのような環境刺激を認識しているかを解明するために、非モデル植物として、熱帯に広く分布する樹木オオバギ属についてゲノムアセンブリとゲノムアノテーションをすすめた。また、モデル植物シロイヌナズナを日本とスイスの野外条件で栽培したところ、ノミハムシ、アブラムシ、コナガなど、それぞれにおいて異なった昆虫群集が植物上に観察された。トリコーム形成遺伝子GLABRA1の変異が、植物の表現型だけでなく、昆虫数という「延長された表現型」にも影響を与えていた。これらの結果は、遺伝子機能の解明のために、野外で変動する生物学的環境・非生物学的環境を考慮する必要があることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非モデル生物である熱帯樹木オオバギ属のゲノム解析を進め、ゲノムワイドな遺伝子解析が進められるようになった。また、モデル生物シロイヌナズナの野外解析では、非生物学的な環境要因だけでなく、生物学的な環境要因の寄与も同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
熱帯樹木とモデル生物シロイヌナズナを組み合わせることで、野外での植物の環境認識と記憶の研究に取り組む。
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