公募研究
1.ストレス誘導性のアンチセンスncRNAの生成に関わる新規因子の同定および機能解析:2本鎖RNA分解に関与する2本鎖RNaseのRTL1を同定し解析を進めた。RTL1は再吸水処理で発現が上昇する。エストラジオール誘導性の人工miRNAを用いたRTL1の機能抑制系統を作成し解析を進めている。2本鎖RNA分解経路(RDR1/2/6とRTL1が関与)と1本鎖RNA分解経路(XRN4)の関係(RDR1/2/6 がmRNA の分解産物を鋳型とするか)を解析するために、xrn4とrdr1/2/6の4重変異体の作成を試みたがホモ変異体を作出できなかった。F2世代のアリル解析や遺伝学的な連鎖解析に加えて、エストラジオール誘導性の人工miRNAを用いた4重変異体の作成も進めている。新規因子の同定を目指してrdr1/2/6をEMS 処理して、乾燥-再吸水処理後の根の生長がrdr1/2/6と異なる系統を選抜した。根の伸長復帰変異体が3系統、伸長抑制変異体が2系統単離され、変異遺伝子の探索を進めている。2.ストレス誘導性のアンチセンスncRNAの環境ストレス適応・記憶における生理的な機能解明:再吸水による回復時に生理的な機能を有するRDR1/2/6のターゲットmRNAを同定するために、顕著な表現型が観察された根組織を用いてrdr1/2/6および野生株のトランスクリプトーム解析を行った。再吸水時のrdr1/2/6と野生型の発現を比較すると、サリチル酸(SA)応答性の遺伝子の発現が変化していた。rdr1/2/6依存性のアンチセンスncRNA遺伝子座と比較するとSA応答性の転写因子が重複していた。SA処理により、野生型では成長応答に変化が見られないが、rdr1/2/6では根の成長抑制とアントシアニン蓄積が観察された。RDR1/2/6はSA応答の一部を抑制する機能を有することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
連携研究者と密に相談しながら研究を実施しているため。
環境ストレス下でRDR1/2/6によって生成されるアンチセンスRNAは、mRNA分解を促進していた。2018年度にXRN4依存的なRNA分解とRDR依存的なRNA分解が相補的な関係である可能性および、再給水時のrdr1/2/6の表現型がサリチル酸(SA)シグナルに関連する可能性を示した。2019年度は、以下の研究を推進する。1.野生型シロイヌナズナの根の伸長に対してSAシグナルは正負の複雑な制御に関与する事が推測される。アンチセンスRNAの影響がSAシグナルの一部抑制やSAに対する高感受性に関与するかを確認するために、ターゲット遺伝子の変異体を用いた解析やSA濃度を変えた処理実験を実施する。2.mRNA分解に関与するNMDのターゲットmRNAを認識するUPF1, UPF3の変異体ではSA高感受性になることが報告されている。しかしながら、XRN4変異体のSA感受性は報告されていない。アンチセンスRNAの生成機構とSAシグナル経路の関係を明らかにするために、upf1,upf3,xrn4,rdr1/2/6の変異体を用いてSA感受性やRDR1/2/6のターゲット遺伝子(SAシグナル伝達に関与するもの)への影響を解析する。3.XRN4遺伝子を標的としてエストラジオール誘導性人工miRNAを導入したxrn4/rdr1/2/6の4重変異体を用いて、乾燥やSA処理による表現型およびターゲットmRNAの分解速度を測定する。これによって実験2の結果を直接的に確認する。4.RTL1あるいはRTL2遺伝子(RTL1のホモログ遺伝子)に対するエストラジオール誘導性人工miRNAを導入した形質転換体を用いてアンチセンスRNAの蓄積量とRNA分解速度を測定する。これによってRDR1/2/6によって生成されたアンチセンスRNAがRTL1あるいはRTL2により分解されるかを確認する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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