本年度は、メタボローム解析に適したエクソソーム回収法の開発を行った。複数のエクソソーム回収キット、サイズ排除カラムを購入し、エクソソームの回収量とその純度について、従来から用いられている超遠心法と比較し評価した。 エクソソーム回収キットに関しては、比較的良好に回収できるものもあったが、溶液組成が開示されていなかったり界面活性剤が含まれているものがあり、質量分析に適さないものがあった。サイズ排除カラムに関しては、精製度が高く質量分析に適したものもあったが、カラムが小さく回収量が足りないものが多かった。この点については、次年度以降大容量カラムの作成を各メーカーに要請していく。 また、得られたエクソソーム中に含まれる代謝物の網羅的解析法の開発も実施した。回収したエクソソームは量が限られ、これらを効率よく各メタボローム測定に供するためには前処理の最適化が必要であったため、同一サンプルから親水性代謝物、脂質代謝物を同時に抽出する方法を検討した。 さらに、常酸素下と低酸素下で培養を行ったすい臓がん培養細胞から放出されたエクソソーム中に含まれる代謝物の測定を実施した。主成分分析の結果から、常酸素下と低酸素下ではエクソソームの代謝物プロファイルが異なることが判明した。また、細胞との比較によって、エクソソーム中の代謝物量はその放出元である細胞中の量を反映しないことが分かった。このことは、エクソソームの形成過程において、特異的な代謝物の取り込み機構が存在する可能性を示唆するものである。
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