本年度は昨年度に引き続き、メタボローム解析に適したエクソソーム回収法の開発を継続した。最近、磁気ビーズの表面に様々な抗体をつけてエクソソームを補足するキットが販売されており、一部は質量分析にも適用可能であるため、血液サンプルを用いて検討を実施した。 また、企業と共同で液体クロマトグラフィー用のカラムを用いたエクソソーム回収キットの開発を実施した。このカラムはシリカベースの担体でできているため、有機溶媒を用いた洗浄が可能であり、サンプル中に含まれる遊離タンパク質等の夾雑物のカラム内への残存を最小限に抑えることが可能である。 このカラムを分取クロマトグラフ装置に取り付けて、エクソソーム回収の自動化についても検討した。がん培養細胞上清から精製したエクソソーム粗分画画分を本装置にて連続回収した結果、非常に高い再現性を示した。これにより、エクソソーム回収の自動化への道筋がつけられた。 がん細胞中に含まれるがん関連代謝物(オンコメタボライト)を対象に、オンコメタボライトを細胞内に大量に蓄積する細胞株を使って、そこから放出されるエクソソームに含まれる代謝物質をメタボローム解析し、細胞内とエクソソーム内のオンコメタボライトの相関について解析を行った。数種類の細胞株について検討を行った結果、細胞内に多量のオンコメタボライトを蓄積する細胞株ではそのエクソソーム中の量も多く、がん細胞がエクソソームを利用してオンコメタボライトを輸送している可能性が示唆された。
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