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2018 年度 実績報告書

低体温と低酸素抵抗性を伴う生体保護代謝アダプテーションの解明

公募研究

研究領域代謝アダプテーションのトランスオミクス解析
研究課題/領域番号 18H04806
研究機関関西医科大学

研究代表者

小早川 高  関西医科大学, 医学部, 准教授 (60466802)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード情動 / 先天的恐怖 / 嗅覚
研究実績の概要

先天的恐怖情動は危機状態での生存確率を上昇させる行動と生理応答を統合誘導する脳の能力として進化したと考えられる。しかし、モデル動物に効率的に先天的恐怖情動を誘発する技術が存在しないため、潜在的な恐怖情動性の生命保護作用の実態は未解明であった。本研究では、強力な先天的な恐怖行動を誘発する人工匂い分子としてチアゾリン類恐怖臭(Thiazoline-related fear odors: tFOs)を開発することでこの技術的な問題を克服し、先天的恐怖が持つ生命保護作用の実態とそれを司るメカニズムの解明を進めた。TFOs刺激は体温、心拍数、酸素代謝を大きく抑制するとともに、免疫応答にも強力な影響を与えることが初めて明らかになった。TFO刺激は脳においてミトコンドリアでの電子伝達系の活性を抑制すると共に、解糖系の活性を亢進することを基調としたこれまでに知られていない代謝変動を誘発することで、活性酸素の過剰発生を起こさずに酸素消費を抑制することが、メタボロームフラックス解析などにより明らかになった。さらに、この代謝の変動を担う酵素とそのリン酸化による活性変化を解明した。これらの作用は活性酸素の発生や過剰な自己免疫を抑制することで危機状態における保護作用を示し、具体的には低酸素障害、脳梗塞などの虚血再灌流障害、敗血症などの複数の疾患モデルに対する強力な治療効果を発揮した。これらの結果などを総合して、先天的恐怖刺激は潜在的な内在的保護能力が発揮される危機対応モードへと生体の状態を遷移させるという新たな概念を提唱したい。本研究などによりこの概念を構成する基本要素の一つである生体保護代謝アダプテーションの存在とそれを司るメカニズムが解明された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究などにより、TFO刺激がこれまで知られていなかった生体保護代謝を誘導することが解明され、この代謝状態における代謝産物の変動やそれを担う酵素の解明などが順調に進んだ。

今後の研究の推進方策

TFO刺激によりマウスの脳の代謝状態を生命保護モードへと遷移させられることが明らかになった。この現象をヒトやその他の動物に適応することで緊急医療に応用するための研究を継続して実施する。また、脳以外の組織における代謝変動を解明する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Large-scale forward genetics screening identifies Trpa1 as a chemosensor for predator odor-evoked innate fear behaviors.2018

    • 著者名/発表者名
      Wang Y et al.
    • 雑誌名

      Nat Comm

      巻: 9 ページ: 2041

    • DOI

      doi: 10.1038/s41467-018-04324-3.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 先天的恐怖誘導性危機応答モードによる生命保護2018

    • 著者名/発表者名
      小早川 高
    • 学会等名
      生理研研究会『感覚免疫学研究会』
    • 招待講演
  • [学会発表] 先天的と後天的な行動制御メカニズムとその生理学的意義2018

    • 著者名/発表者名
      小早川 高
    • 学会等名
      第11回北陸合同バイオシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Innate fear odors orchestrate life-or-death effects in mice.2018

    • 著者名/発表者名
      小早川 高
    • 学会等名
      伝研研究会「Circuit construction in the mammalian brain (哺乳類脳の機能的神経回路の構築メカニズム)」
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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