研究領域 | 代謝アダプテーションのトランスオミクス解析 |
研究課題/領域番号 |
18H04807
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
堀之内 貴明 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60610988)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 実験室進化 / オミクス解析 / 代謝阻害剤 / トランスオミクス解析 |
研究実績の概要 |
生物システムは環境変動に対し、ゲノム配列・遺伝子発現・代謝フラックスなど複数の階層をまたぐダイナミックな相互作用を通じ、表現型を変化させることにより適応することができる(代謝アダプテーション)。しかしその代謝アダプテーションによる表現型の変化は変幻自在というわけではなく、制約が存在する。そこで本研究では、代謝アダプテーションの過程において取り得る表現型が一定の範囲に制約されるメカニズムを解明し、その予測と制御を可能とする手法を開発する。申請者が開発したラボオートメーションによる全自動実験室進化システムを用い、代謝阻害剤を培地中に添加した環境下で継代培養による実験室進化を行うことにより代謝アダプテーションを生じさせ、その解析を行う。 2018年度は様々な作用機序を示す代謝阻害剤を題材とし、それぞれ単剤を培地に添加した環境下における実験室進化を行った。27種類の代謝阻害剤のそれぞれに対して適応した株を、各環境複数株ずつ取得することに成功した。また、これらの適応株が、他の様々な代謝阻害剤に対して表現型をどう変えたかを解析したところ、いくつかの代謝阻害剤について、一方に適応すると他方への適応度が低下するというトレードオフの関係が見出された。さらに、それらの代謝阻害剤を同時に添加すると、増殖を顕著に阻害する効果があることが明らかとなった。こうした結果は、表現型が制約されるメカニズムを理解するための基盤となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代謝阻害剤を添加した環境下での実験室進化が終了し、代謝阻害剤に対して適応した株を取得することに成功している。これらの株をトランスオミクス解析(ゲノム、トランスクリプトーム、メタボローム解析)に供するにあたり、メタボローム解析は必要菌体量が多いため、サンプルの取得には培養系のスケールアップが必要であることが判明した。スケールアップ実験の培養条件検討のためトランスオミクス解析の着手が予定より遅れたが、既に条件検討は終了しており、すぐにトランスオミクス解析に着手できる状況にある。この間に、取得した適応株の他の代謝阻害剤に対する表現型解析を前倒しして行い、今後の研究の基盤となるデータを得ることに成功している。以上の理由により、研究は順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、前年度に取得した代謝適応株を題材とし、トランスオミクス解析(ゲノム、トランスクリプトーム、メタボローム解析)を行う。トランスクリプトームとメタボロームがどのような特徴量によって記述されるかを解析し、それらとゲノム配列の変化の対応を解析することにより、代謝アダプテーションの過程を少数の自由度で適切に記述する。これらの結果から、大腸菌の代謝アダプテーションの過程で容易に生じる表現型変化と生じない表現型変化がどのように存在するかを明らかにし、制約のメカニズムとその操作可能性を明らかにする。
|